第5話『夏のデスゲーム大会・開幕』

 夏のデスゲーム大会当日。
 陽葵は朝食を取っていた。ご飯に納豆をかけ、口に運ぶ。
 (このネバネバがいいんだよね)
 向かいに座る、父・尚人が。(はし)を置き、陽葵を見る。
 「陽葵」
 「何?」
 ヒナタは茶碗を置き、父である尚人の方を見る。
 「精一杯、頑張れよ! 応援している!」
 父・尚人(なおと)は真剣な眼差しで、陽葵を鼓舞(こぶ)する。
 「お父さん……」
 「陽葵、お母さんに連絡してね! お父さんと一緒に寿司屋さんに行きましょう!」
 隣にいる母・陽菜子(ひなこ)は、はつらつとした感じでヒナタの肩に手をそえる。
 「お母さん……」
 両親の愛を感じた。デスゲーム大会をなんとしても、勝利しなくてはならない。
 (絶対、勝利して、両親とお寿司屋でお祝いするんだ!)


 ♦♦♦

 学校に到着すると、すでに大半の生徒達がいた。
 中には、緊張のあまり吐いてしまっている子もいる。
 よく見知った3人がこちらにやって来た。
 「おはよう、陽葵、遅いぞ!」
 「おはよう、陽葵!」
 「……おはよう!」
 「3人とも、おはよう! 別に遅くないじゃん!」
 掛け時計を見たら、8時02分であった。
 「俺なんか、6時半にはいたぞ」
 「わたしは、7時20分」
 「……7時30分」
 「3人とも、早すぎ!」
 朝のホームルームが始まるまで、陽葵達は作戦会議をする。
 陽葵はいつも通り、戦士として前衛だ。
 敵を挑発し、ターゲットをサマエルに集中させる。HPが3割減ったら、竜堂の悪魔であるネコミとバトンタッチ。結菜の悪魔、ミエルがサマエルに近づき回復。治癒しだい前線に戻る。良太は中衛で、司令塔として指示する。時と場合によっては前線、あるいは後衛になる。
 話し合っていくうちに、担任の闇与見(やみよみ)先生がやって来た。
 壇上に出席簿を置き。
 「おはよう、みんな! いよいよ大会だな!」
 闇与見先生はあえて大きな声で話す。笑顔だが、目は笑っていない。
 先生なりに、生徒達を心配しているのだろう。
 「そうですね」
 「はい」
 「緊張します」
 みんな、不安や緊張、恐怖でソワソワしていた。
 「いいか、お前ら。デスゲームは毎年、死人が出る。自分は大丈夫だと思って高をくくるな。謙虚に挑め。だが、自信はある程度、必要だ。最後はまで諦めず、冷静に挑めよ」
 生徒達も先生の言葉に、心が打たれ、目にやる気の炎が宿り始める。
 朝のホームルームも終わり。先生は立ち去った。

 ♦♦♦

 デスゲーム大会の会場は体育館だ。
 デスゲーム大会は2年生も3年生も行う。

 1年生は1日目。
 2年生は2日目。
 3年生は3日目。

 日程としては1時限目は1年B組。
 2限目は陽葵達のクラスは1年C組。
 3限目は1年A組だ。

 ヒナタ達は体育館の近くにある待合室で、待機だ。スマホは事前に、デスゲーム大会の実行委員が預かる。
 広い校庭には救急車が40台以上、とまっている。
 1時限目が始まった。

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 それから20分後。
 待機室でも聞こえる、救急車のサイレン。
 生徒達は恐怖で、震えてる。中には泣き出す女子が複数にいた。
 サイレンが鳴っているという事は、死人が出たのだろう。
 「陽葵……」
 結菜が陽葵の手を握る。
 「大丈夫だよ。結菜、私がついてる」
 陽葵は彼女の手を握り返し、気丈(きじょう)()る舞う。
 確かに不安と恐怖はある。だが、それ以上に愛するサマエルと一緒に、命をかけて戦う事に、
 小さな闘争心(とうそうしん)(いく)ばくの喜び、そして高揚感(こうようかん)がある。
 何度か救急車のサイレンが聞こえるが、陽葵の――心の火は消えない。
 制限時間がすぎ、20分が経つと、1年B組の生徒達は体育館から出る。
 次は陽葵達の番である。待合室から体育館に移動。
 体育館には35台以上に及ぶパソコンと机、椅子がセッティングされていた。
 デスゲーム大会の実行委員からスマホを受け取り、みな、指定の席に座る。
 パソコンがちゃんと作動するかチェック。インカムもつけて、確認。
 陽葵の右側には結菜、左側には良太、その隣に竜堂である。
 竜堂、良太、陽葵、結菜である。
 モニターにはスタート画面が映し出されていた。
 大会の実行委員の一人が体育館の前でマイクを握る。
 「今回、1年が倒すモンスターはワイズ1体、スケルトンウォリアー2体だ――」
 生徒達は動揺しざわめく。ワイズはCクラスのモンスター。スケルトンウォリアーもCクラスだ。1体ならともかく、3体のモンスターを相手にするのは1年生にはキツいだろう。
 それに、1年C組の悪魔達は陽葵ほど強くない。
 大半が下位、下の上クラスの悪魔だからだ。
 それにワイズは魔法を使ってくる、ロイドの魔法防御力は低くないが、物理防御力ほど高くもない。一抹の不安を感じる。
 「結菜、大丈夫?」
 右側にいる結菜は歯をカチカチさせ、マウスを握る手も震えている。
 「結菜、しっかりして!」
 「う、うん!」
 「今野、もしダメそうなら、オート設定しろ」
 良太が冷静にインカムごしに言う。
 「わ、わかった!」
 実行委員は腕につけているデジタル腕時計を見る。
 体育館に備え付けられている、デジタル時計はカウントダウンする。
 「5秒前、4、3、2、1では、始め――」

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