エステルのほんわかした空気とは違って、通された応接室はシックな落ち着きのある部屋だった。静かなトーンの壁やソファに囲まれて、エステル一人が花畑の中にいるようだった。
「カイ、それにレアさん、お二人で来て下さるなんて嬉しいわ」
「……我々の関係をご存じのようだ」
ぶっきらぼうにそう言うカイに、エステルはただ微笑みだけで返す。
「私、あなたとお話したいと思っていたのよ、カイ」
「……王家御用達の大商会のお嬢様が、アラヤの者といったい何のお話が?」
「まぁ! あなたの手腕は、ちゃんと知ってますのよ。アーロンの遊び場のこと、なんかね」
カイの眉がピクリと動いた。
摘発騒ぎのことは王都で知れ渡っていることだが、そこにカイが関わっていると知る者は少ない。そこまでは通知に書かれていなかったし、監視官も細かな顛末を話すこともない。
どこからカイの関わりを知ったのか。カイの視線が、急速に鋭く尖っていく。
「うふふ。サムエルとはお知り合いですもの。情報くらい入ってきますわ。大損したから、いい儲け話があったら一枚噛ませてくれ……なんて言ってね」
「今の貴女なら、儲け話など掃いて捨てるほどお持ちでしょう」
「お金は大事よ。儲け話もね。一日で金庫を空にされてしまうような人に差し上げる話なんて、持ち合わせがなくてよ」
うふふ、と柔らかな笑い声が響く。
軽やかに笑いながら、エステルは、王都の裏社会を牛耳るアーロンを無能呼ばわりした。最初に抱いた印象は間違いだったと、レアは、この時ようやく気付いたのだった。
「アーロンには聞く耳持たないが、この私の話は聞いて下さると?」
「もちろん。だって同じ王の血を分けた『姉弟』ですもの。良き国を作るために、手を取り合わないとね」
「……ならば、単刀直入に聞こう。『黒い金』の話は本当か」
エステルの口角が、更に高く、持ち上げられる。待ち望んでいた瞬間が来た、と言うように。
「本当よ。近々、陛下に献上することになっているわ」
「いったいどうやって、そんな話をまとめた?」
「それは企業秘密というものよ」
「……まぁ、取引を独占する代わりに倍の価格で買い取る……そんなところだろう」
「ありきたりでつまらない案ね。もっと驚くような方法を思いつく人だと思っていたのに」
「そこまで買われている理由がわからないが……」
「あら、ぬくぬく育った王侯貴族よりも、あなた方アラヤ家の方が優秀だって、知っているのよ」
「……それで? 本当のところは?」
「カイ、それにレアさん、お二人で来て下さるなんて嬉しいわ」
「……我々の関係をご存じのようだ」
ぶっきらぼうにそう言うカイに、エステルはただ微笑みだけで返す。
「私、あなたとお話したいと思っていたのよ、カイ」
「……王家御用達の大商会のお嬢様が、アラヤの者といったい何のお話が?」
「まぁ! あなたの手腕は、ちゃんと知ってますのよ。アーロンの遊び場のこと、なんかね」
カイの眉がピクリと動いた。
摘発騒ぎのことは王都で知れ渡っていることだが、そこにカイが関わっていると知る者は少ない。そこまでは通知に書かれていなかったし、監視官も細かな顛末を話すこともない。
どこからカイの関わりを知ったのか。カイの視線が、急速に鋭く尖っていく。
「うふふ。サムエルとはお知り合いですもの。情報くらい入ってきますわ。大損したから、いい儲け話があったら一枚噛ませてくれ……なんて言ってね」
「今の貴女なら、儲け話など掃いて捨てるほどお持ちでしょう」
「お金は大事よ。儲け話もね。一日で金庫を空にされてしまうような人に差し上げる話なんて、持ち合わせがなくてよ」
うふふ、と柔らかな笑い声が響く。
軽やかに笑いながら、エステルは、王都の裏社会を牛耳るアーロンを無能呼ばわりした。最初に抱いた印象は間違いだったと、レアは、この時ようやく気付いたのだった。
「アーロンには聞く耳持たないが、この私の話は聞いて下さると?」
「もちろん。だって同じ王の血を分けた『姉弟』ですもの。良き国を作るために、手を取り合わないとね」
「……ならば、単刀直入に聞こう。『黒い金』の話は本当か」
エステルの口角が、更に高く、持ち上げられる。待ち望んでいた瞬間が来た、と言うように。
「本当よ。近々、陛下に献上することになっているわ」
「いったいどうやって、そんな話をまとめた?」
「それは企業秘密というものよ」
「……まぁ、取引を独占する代わりに倍の価格で買い取る……そんなところだろう」
「ありきたりでつまらない案ね。もっと驚くような方法を思いつく人だと思っていたのに」
「そこまで買われている理由がわからないが……」
「あら、ぬくぬく育った王侯貴族よりも、あなた方アラヤ家の方が優秀だって、知っているのよ」
「……それで? 本当のところは?」


