「第61王女エステル=シルヴォラ? ああ、あの豪商の孫の……」
100人も候補者がいるとなると、さすがに王侯貴族ばかりとはいかないようだ。シルヴォラ商会は王家の覚えもめでたい王都一の商店であり、レアの生家よりもよほど裕福で、貴族に近い待遇らしい。
「そのエステル嬢がさ、近々大きな商談をまとめるそうだよ」
「大きな商談? 具体的には?」
「『黒い金』だよ」
その名に、レアもカイも目を瞠った。
『黒い金』とは黒胡椒を指す。東方でしか栽培できず、流通ルートも確立できない幻の逸品であった。貴重な調味料であり、薬としても重宝され、おまけにどんな料理も美味にすると噂されている。その結果、ついた二つ名が『黒い金』というわけだ。
「一粒で金と取引されるという話も聞いたな。その流通ルートを確立できるということか?」
「らしいよ。どんな手を使ったんだか」
二人の口ぶりから、その『エステル嬢』は何かしら疑われているということはわかる。それが正しいのか否かの判断はレアにはできない。なので口を挟まずにいたのだが……唐突に、カイが、レアに向けてニタリと笑った。嫌な予感が、する。
「それは……ぜひ、あやかりたいものだな」
そう言うと、カイはおもむろに立ち上がった。そしてゆったりとした足取りでレアの 方へと歩み寄り、優しくその手をすくい上げる。
やんわりと持ち上げられた口の端に、怪しげな気配を感じたのは、気のせいだろうか。
レアがそう感じて、ひそかにおののいていることを知ってか知らずか、カイは優しい声音で告げる。
「では行こうか。俺の幸運の女神様……幸福をもたらすかもしれない淑女のもとへ」
100人も候補者がいるとなると、さすがに王侯貴族ばかりとはいかないようだ。シルヴォラ商会は王家の覚えもめでたい王都一の商店であり、レアの生家よりもよほど裕福で、貴族に近い待遇らしい。
「そのエステル嬢がさ、近々大きな商談をまとめるそうだよ」
「大きな商談? 具体的には?」
「『黒い金』だよ」
その名に、レアもカイも目を瞠った。
『黒い金』とは黒胡椒を指す。東方でしか栽培できず、流通ルートも確立できない幻の逸品であった。貴重な調味料であり、薬としても重宝され、おまけにどんな料理も美味にすると噂されている。その結果、ついた二つ名が『黒い金』というわけだ。
「一粒で金と取引されるという話も聞いたな。その流通ルートを確立できるということか?」
「らしいよ。どんな手を使ったんだか」
二人の口ぶりから、その『エステル嬢』は何かしら疑われているということはわかる。それが正しいのか否かの判断はレアにはできない。なので口を挟まずにいたのだが……唐突に、カイが、レアに向けてニタリと笑った。嫌な予感が、する。
「それは……ぜひ、あやかりたいものだな」
そう言うと、カイはおもむろに立ち上がった。そしてゆったりとした足取りでレアの 方へと歩み寄り、優しくその手をすくい上げる。
やんわりと持ち上げられた口の端に、怪しげな気配を感じたのは、気のせいだろうか。
レアがそう感じて、ひそかにおののいていることを知ってか知らずか、カイは優しい声音で告げる。
「では行こうか。俺の幸運の女神様……幸福をもたらすかもしれない淑女のもとへ」


