東京府大手町には勇が勤務する内務省が建っている。
討伐課というプレートが下げられた部屋で会議をした後、すれ違いさま井上は「柚さんのことを狙っているのは大山くんだけではなく、僕も同じですよ」と勇に聞こえるくらいの微量な声量で言った。
「なっ、、、!!」
突然のライバル宣言に固まる勇。それを見ながら何食わぬ顔でチョコレヱトを手に取る井上。そしてそのチョコレヱトは吸い込まれるように消えていく。
同僚達はというと、固まってビクともしない勇を鉛筆でつついたり、絵に残したりして揶揄う。
「井上ー!何か知ってるー?」
「さぁ、どうでしょう?」
「絶対知ってるやつだ!」
そんな会話が繰り広げるなか、勇の頭は井上が言った言葉で埋め尽くされていた。
(え、昴も狙っている、、、?嘘だろ、どうしよう!?)
などと慌てている。
新しい物に興味関心を示して気に入ればそれを我が物にする井上のことだから、彼女に対してより一層の興味を抱くに違いない。
それは勇にとって、あまり愉快と言えない展開だ。
何より井上は何をしても完璧だった。副業は実業家らしく、商談の進め方が上手い。それに加えて紐育に留学もしていたらしい。非の打ち所がないというのは彼のことを指すのだろうか?
だが、相手が井上昴だからという訳ではない。恐らく誰が相手でもだ。颯介が酔って柚を口説いた時にも同じような心持ちになった。
胸の引っかかりから目を逸らすように、今日の新聞に目を通す。
面白そうな記事は見付けられなかったが、気になる見出しを見付けた。
『帝國ホテルで盗難騒ぎか』
帝國ホテルといえばあの、日本屈指の高級ホテルだ。そのような場所で窃盗など、どうかしている。
そして文章には『犯人は死ニカエリだと睨んでおり―――』など、意味が分からない文章が並んでいる。死ニカエリは人を襲う。だが、窃盗など今まで前例がなかった。何故なら死ニカエリは生者の体を求めるのであって、金銭など盗っても何の意味もない。
「おーい、勇。どしたー?」
「立花、この記事を見てみろよ」
声をかけてきた颯介に新聞を渡す。
「えっと、死ニカエリが窃盗、、、?そんな訳ないじゃん」
「だよなー」
「死ニカエリ関連の事件は俺達のとこに全て伝わるのに、、、こんな情報は伝わってないと思うよー」
「まぁ、みんなに聞いてみた方が早いよなー!」
みんなに聞いた結果、その事件を受け持っていたのは虎太郎だった。
「本当に死ニカエリが行っているのかすら怪しいのだが、、、」
「もしくは死ニカエリのふりをして犯行に及んだかもしれませんね」
視える視えないは別として、人は正体の分からないモノを怖がる。例えそれが死ニカエリのふりをした人間でも、目撃者からすれば偽物か本物かなんて区別つかない。
「昴の言うことも視野に入れて調査しないとな、、、」
「頑張れ、虎」
「おー、労いは帝國ホテルのダイニングレストランの奢りが良い」
「こんな大人数で押しかけたら迷惑だ」
「いえ、貸し切りにするという手もありますよ?」
「貸し切り!?」
あの帝國ホテルのレストランを貸し切るなんて、井上の財力はどうなっているんだ、、、?と、勇は心の中で呟いた。
「あ、貸し切るなら柚さんも一緒が良いですね」
「おっ、良いねー!人数は多い方が良いからねー!」
「田中、また酔い潰れんなよ?」
「はぁ?酔ってないし」
「いや、酔ってたよ。あれは傑作だったなぁ」
「介抱する身にもなれ」
「何でおれ、こんなに責められないといけない訳?」
結局、帝國ホテルのレストラン貸し切り話は捜査中である置屋の死ニカエリと帝國ホテルの窃盗騒ぎが片付いてから行くことになった。
討伐課というプレートが下げられた部屋で会議をした後、すれ違いさま井上は「柚さんのことを狙っているのは大山くんだけではなく、僕も同じですよ」と勇に聞こえるくらいの微量な声量で言った。
「なっ、、、!!」
突然のライバル宣言に固まる勇。それを見ながら何食わぬ顔でチョコレヱトを手に取る井上。そしてそのチョコレヱトは吸い込まれるように消えていく。
同僚達はというと、固まってビクともしない勇を鉛筆でつついたり、絵に残したりして揶揄う。
「井上ー!何か知ってるー?」
「さぁ、どうでしょう?」
「絶対知ってるやつだ!」
そんな会話が繰り広げるなか、勇の頭は井上が言った言葉で埋め尽くされていた。
(え、昴も狙っている、、、?嘘だろ、どうしよう!?)
などと慌てている。
新しい物に興味関心を示して気に入ればそれを我が物にする井上のことだから、彼女に対してより一層の興味を抱くに違いない。
それは勇にとって、あまり愉快と言えない展開だ。
何より井上は何をしても完璧だった。副業は実業家らしく、商談の進め方が上手い。それに加えて紐育に留学もしていたらしい。非の打ち所がないというのは彼のことを指すのだろうか?
だが、相手が井上昴だからという訳ではない。恐らく誰が相手でもだ。颯介が酔って柚を口説いた時にも同じような心持ちになった。
胸の引っかかりから目を逸らすように、今日の新聞に目を通す。
面白そうな記事は見付けられなかったが、気になる見出しを見付けた。
『帝國ホテルで盗難騒ぎか』
帝國ホテルといえばあの、日本屈指の高級ホテルだ。そのような場所で窃盗など、どうかしている。
そして文章には『犯人は死ニカエリだと睨んでおり―――』など、意味が分からない文章が並んでいる。死ニカエリは人を襲う。だが、窃盗など今まで前例がなかった。何故なら死ニカエリは生者の体を求めるのであって、金銭など盗っても何の意味もない。
「おーい、勇。どしたー?」
「立花、この記事を見てみろよ」
声をかけてきた颯介に新聞を渡す。
「えっと、死ニカエリが窃盗、、、?そんな訳ないじゃん」
「だよなー」
「死ニカエリ関連の事件は俺達のとこに全て伝わるのに、、、こんな情報は伝わってないと思うよー」
「まぁ、みんなに聞いてみた方が早いよなー!」
みんなに聞いた結果、その事件を受け持っていたのは虎太郎だった。
「本当に死ニカエリが行っているのかすら怪しいのだが、、、」
「もしくは死ニカエリのふりをして犯行に及んだかもしれませんね」
視える視えないは別として、人は正体の分からないモノを怖がる。例えそれが死ニカエリのふりをした人間でも、目撃者からすれば偽物か本物かなんて区別つかない。
「昴の言うことも視野に入れて調査しないとな、、、」
「頑張れ、虎」
「おー、労いは帝國ホテルのダイニングレストランの奢りが良い」
「こんな大人数で押しかけたら迷惑だ」
「いえ、貸し切りにするという手もありますよ?」
「貸し切り!?」
あの帝國ホテルのレストランを貸し切るなんて、井上の財力はどうなっているんだ、、、?と、勇は心の中で呟いた。
「あ、貸し切るなら柚さんも一緒が良いですね」
「おっ、良いねー!人数は多い方が良いからねー!」
「田中、また酔い潰れんなよ?」
「はぁ?酔ってないし」
「いや、酔ってたよ。あれは傑作だったなぁ」
「介抱する身にもなれ」
「何でおれ、こんなに責められないといけない訳?」
結局、帝國ホテルのレストラン貸し切り話は捜査中である置屋の死ニカエリと帝國ホテルの窃盗騒ぎが片付いてから行くことになった。