======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
 中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。(今回は出番無し?)
 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
 中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
 泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。

 榊田管理官・・・警視庁管理官。交渉人課課長。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 午後1時。中津興信所。会議室兼所長室。
 マルチディスプレイに、中津警部が映っている。
 「今回の依頼は、立てこもりだ。」
 「立てこもり?警察の仕事じゃないのか、兄貴。」
 「事件は、午前9時に起こった。診療所の立てこもり。被害者予定だったのが私のクライアント。契約内容は言えないけど、そのクライアント安藤豊さんが、初秋に風邪を引いた。いや、風邪だと思って漢方の風邪薬や風邪に伴う咳止めを飲んでいたのね。で、どうもおかしいから、通院している外科・内科の診療所で診察して貰い、新しく新薬の風邪薬を出して貰った。
 で、そうも治りが悪い。熱はないからインフルエンザやコロニーじゃない。主治医は、レントゲン撮影をした上で『アレルギー性ぜんそく』と判断した。それも頻度は下がったが、咳の回数がゼロになった訳ではない。念の為、提携している病院に紹介状を書いて貰ってCT撮影検査。結果、深刻な肺の病気の状態ではない、と病院の医師Aから返事が来た。しかし、CTの奥の方、膵臓に石があるような影。それで、主治医は病院の消化器内科で検査するように指示。それで、病院ではエコー検査、血液検査、尿検査を行った。で、医師Bは、確かに膵臓に石はあるが、深刻な病気の兆候はない、と安納さんは言われた。ここからが問題。医師Bは、その日の検査が異常ない、と出ているにも関わらず、主治医に相談する訳でもなく、MRI検査を予約した。安藤さんは、昔、似た様なことがあったのを思い出した。詳細はともかく、安藤さんは医師Bが『患者の横取り』をしようとしているのではないか、と直感が働いた。それで、病院の予約をキャンセルした。『MRI検査の日』と『MRI検査の結果を聞きに来る日』の予約を。レントゲンや心電図等の診療所で行っている検査で不充分な検査を病院に委託しているだけなのに、とこぼしてたわ。」
 「まさか、立てこもっているのは、安藤さん?」
 根津の言うことに、「何言ってる?先生は被害者予定って言わなかったか?」と、泊が注意した。
 「立てこもっているのは医師B。安藤さんは、診察予定時間じゃないから、まだ到着していない、ですね、先生。」と高崎がフォローした。
 「その通り。医師Bは、安藤さんの主治医に勝手にMRIを止めさせたから恥をかいた、と主治医を責め、診療所の予約データシステムから安藤さんの来る日だと知って、時間稼ぎをしている。来なければ脅す積りかもな。」と中津警部は言った。
 「医者も人の子、感情もプライドもある。でも、医者のマナー違反はいけないですね。」と、いつの間にか入って来た宮田元准教授が言った。
 「多分、昔で言うインターン。医師の駆け出し。安藤さんを自分の患者にしたかった。大きな病院なら、病院の都合でないキャンセルには敏感。客商売には違い無いですよね。」
 「話が長くなったが、兄貴。お義姉さまのクライアントの護衛をしろってことかな?」
 「やはり、お前は頭がいい。今、榊田管理官が交渉に当たっているが、安藤さんを連れて来い、って言っているらしい。下手をすると安藤さんも主治医も命が危ない。」

 午後4時。御前崎クリニック。
 安藤が到着すると、榊田管理官が耳打ちした。
 安藤が受付けを通った後、幽閉に使われたリハビリ室の隅に看護師長が安藤を通した。
 患者は全て追い出され、クリニックスタッフが縛られていた。
 院長は、毅然として、「安藤さんは悪くない。この人は医師に向いていない。何時用関係者は患者に寄り添わなくて行けないんだ。」と言った。
 医師Bこと大貫晋三は、拳銃を撃った。
 罪が重なった。
 裏口からやってきた、健二、高崎、泊がその瞬間、取り押さえた。
 「榊田さんを呼べ。」と、健二は公子に指示した。

 警察官に連行されていく大貫に突撃巣材を試みる記者がいたが、榊田は歯牙にも掛けなかった。
 医師・看護師・スタッフか開放され、診察が再開された。
 安藤は本庄弁護士と再会した。
 「先生。院長先生が庇ってくれました。」
 「そう。良かったわね。」
 「提携関係は持続します。病院側も非を認めています。」
 「CTの結果が異常なしなのに、造影剤を注射するCTをすると言い出した時から違和感がありました。僕はモルモットになる所でした。」

 中津興信所の面々は引き揚げた。
 健二は、階下に降りていき、宮田に顚末を伝えた。
 「安藤さんは、親身になてくれるお死者にかかっているのですね。」
 そう、しんみり言った。
 「おでん、食べます?」
 「食べます。」

 ―完―







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