======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
 中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。(今回は出番無し?)
 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
 中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
 泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。

 新里[筒井]警視・・・警視庁テロ対策課勤務。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 午後1時。中津興信所。会議室兼所長室。
 マルチディスプレイに、緊張した中津警部が映っている。
 「何だよ、兄貴。今朝は恐い顔して。」
 「健二。島崎警部補、知ってるよな。」
 「定年前に、ひとはなって警察学校の指導官した人だろ?3年前だっけ?」
 「島崎さんが、今朝、お台場で死体で発見された。犬が吠えるから何だろうと思って飼い主が近寄ったら、死体だった。島崎さんは、朝のウォーキングが日課で、発見者の斎藤陸奥児さんと知り合いだ。」
 「じゃ、犬も、『あ、斎藤さんだ』って吠えたのね。」と根津が言うと、「んなわけないっしょ。」と、泊が言った。
 「犬の気持ちはともかく、犬はお手柄だな。冷え込んだ朝だったが、散歩して良かった、と島崎さんは言っている。今夜、お通夜だ。健二・・・。」
 「皆までいうな、兄貴。お通夜に出席して、怨恨とかないか聞き込みするんだろ?」
 「俺は、いい弟を、いや、優秀な弟を持ったな。」
 「それ、褒めてるの?」「勿論。頼むよ。俺は警察学校に行って来る。」
 マルチディスプレイから警部が消えた。
 「カッターシャツ、買ってくるわ、まだ、クリーニング、出してなかった。」
 午後2時。府中市。警視庁警察学校。
 「経歴詐称?」校長の三上の言葉に中津警部は耳を疑った。
 「履歴書、職務経歴書の他、運転免許証、住民票。全て偽物でした。お名前カードは未だ作っていない、と言っていました。多分、偽造しにくかったのでしょう。」
 「3人とも?」「3人とも、です。」
 「それを3人ともおかしい、と見破ったのですね、斎藤さんは。」
 「そうです。」「どうして見破れたのですか?」「言葉です。」
 「言葉?」「言葉の選び方。3人とも別々に入学したのに、すぐに仲良しになったのもおかしい、と言っていました。斎藤さんは現場で色んな人間を見て来た。そのお陰で出来たカンが仇になってしまった。」
 「許せないわ。」そう言ったのは、久保田あつこと一緒に来ていた新里だった。

 午後8時。読経が終わり、弔問客が引き揚げて行く。
 3人の男が、一斉に手錠をかけられた。
 かけたのは、あつこと新里、そして中津警部だった。
 高崎が、やってきた。
 「今、遺族からお預かりしてきました。遺体のズボンの奥にあったそうです。」
 久保田管理官が預かったのは、ピアスだった。
 「斎藤さんは、必死にもぎ取ったのだろう。不起訴なんかにはさせない。」

 午後9時。中津健二の自動車車中。
 公子が運転している。
 「言葉で分かる、って凄いなあ。」
 「なあに、『固有の単語』ってあるんだよ。いくら2世、3世で日本に長く住んでいても。それぞれが別々に講義を受けていたならばれなかったかもしれないが。言ってみれば『お国訛り』だ。つるんでいると油断もする。彼らの任務は、日本の警察のレベルを図ることだったらしい。」
 「思った以上に『高いレベル』だった訳ね。揉み合う内に、ピアスを掠め取るなんて想定外に違い無い。そもそも、日本の警察官はピアスしない。男性も女性も、だ。」
 「ふうん。そういや、あきちゃん、ピアスしない。何故?はいいか。取り敢えず。」
 「取りあえず、ラーメン屋寄って行こう。」「賛成。」

 ―完―