「お前はいい子だから」
「お前は賢い子だから」
「「選ばれたんだよ、神様に」」
青い空は当たり前の景色だと思っていた。これからも家族と一緒に幸せに暮らせると思っていた。
村には昔からの風習で3年に1度、生贄として15の歳の男を神に捧げる。神に生贄を捧げることによって、村の作物は安定して育ち、自然災害などの災いが降りかかることもないと言う。
神に捧げられた人々は村の民たちから称えられ、村の光として永遠に名を刻まれる。
例えそれを望んでいなくても。
「なぁなぁ、今年は"生贄"ってやつを神様に捧げる年だろ?」
興味津々な顔で尋ねてきたのは6歳のみなと。好奇心旺盛で元気な男の子だ。
「そうだね、今年は誰なんだろうね」
「兄ちゃん、行かないでよ⋯」
泣きそうな顔で僕にしがみつく。そんな湊音を見て僕は少し笑う。
「僕なわけないよ!他の子達の方が優秀だし」
「兄ちゃん⋯」
すると、学校帰りの子供たちの声が聞こえてくる。
「もう行きな、僕に構うと仲間はずれにされちゃうよ」
「いや、まだ話してたいもん⋯!」
「お願いだから⋯」
少し不満そうな顔をして足早に僕のもとを離れて行った。
そう、僕は村の大半の人に好かれていない。理由は明白だ。
3年前のある事件があってから僕は村の人々に嫌われている。
「もう3年か⋯」
そう一言呟いた時、玄関の扉を叩く音がする。
「誰ですか⋯?」
「神の使いの者で御座います。おめでとうございます、生贄に選ばれました。今夜この村を立ち、明日の朝神様の元へ着くご予定です。」
「神の使い⋯?」
頭が回らなかった。僕が生贄?意味がわからない。きっと何かの間違いだ。そう信じて疑わなかった。
「何かの間違いじゃないですか?僕が生贄なんて⋯」
「そうで御座いましたか。再度確認いたします。」
そう言ってどこかえ消えてしまった。
「なんだ、やっぱり僕じゃない⋯」
「ご確認致しましたか、貴方様で間違っておりません。今夜、またお迎えにあがりますので準備をよろしくお願い致します」
「いや⋯なんで僕が⋯!」
白い煙と共に神の使いは消えてしまった。
生贄と聞いてまず真っ先に頭に浮かんだのは湊音の事だった。あの子には伝えなきゃならない。
そう思って家を飛び出した。
「何処にいるんだ、湊音」
そう言いながら必死に探した。学校近くの公園も、子供がよく集まっている平地にも行った。だが、湊音の姿は見えなかった。
「はぁ、湊音。お前がどこで何してるか、僕には知らないことだらけらしい」
そう呟いた時、丁度湊音が前を通り掛かった。
「湊音!」
「兄ちゃん、なんでこんなとこに⋯?」
不安そうな顔で駆け寄ってきた。きっとさっきのことで不安が増しているのだろう。
「あ⋯大丈夫。大事な事を伝えに来ただけなんだ湊音。僕、生贄に選ばれちゃったよ。今日で最後だ」
「兄ちゃん、行かないでよ⋯」
今にも泣きそうな顔で僕を呼ぶ。僕も涙をグッと堪えて湊音を抱き寄せる。
「湊音、このことは湊音にしか言ってないんだ。なんでか分かる?湊音が僕の中で一番大切な人だからだよ」
脳内で、湊音との思い出が再生される。コソコソ隠れて一緒に遊んだ日、どうでもいいことで笑った日、どれもこれも大切な思い出ばかりで言葉では言い表せない感情が襲ってきた。
溢れ出た涙を拭って湊音を見つめる
「⋯何?兄ちゃん」
「湊音、大好きだよ。これだけは忘れないで、湊音だけが僕の友達であり家族なんだ」
「兄ちゃん、なんで生贄なの⋯?」
ぐしゃぐしゃの顔で湊音は言う。僕も涙を流しながら答える。
「わかんない、なんでだろうね」
泣いている。だけど幸せそうな笑みがこぼれる。
「最後だもんね、笑ってお別れしなくちゃ」
湊音は僕に笑顔をくれた。僕も笑って湊音を抱きしめた。
その日の夜。家に戻ると、もう神の使いが来ていた。
「予定が少し遅れそうです⋯。もう準備はお済みでしょうか?よろしければここに腰かけてお待ちください」
「すみません⋯」
謝りながら椅子のようなところに腰かける。すると神の使いが大きな鳥に変化して空を舞った。空から見る村はとても綺麗で、いつもより近い星が僕を照らしているようだった。
「お前は賢い子だから」
「「選ばれたんだよ、神様に」」
青い空は当たり前の景色だと思っていた。これからも家族と一緒に幸せに暮らせると思っていた。
村には昔からの風習で3年に1度、生贄として15の歳の男を神に捧げる。神に生贄を捧げることによって、村の作物は安定して育ち、自然災害などの災いが降りかかることもないと言う。
神に捧げられた人々は村の民たちから称えられ、村の光として永遠に名を刻まれる。
例えそれを望んでいなくても。
「なぁなぁ、今年は"生贄"ってやつを神様に捧げる年だろ?」
興味津々な顔で尋ねてきたのは6歳のみなと。好奇心旺盛で元気な男の子だ。
「そうだね、今年は誰なんだろうね」
「兄ちゃん、行かないでよ⋯」
泣きそうな顔で僕にしがみつく。そんな湊音を見て僕は少し笑う。
「僕なわけないよ!他の子達の方が優秀だし」
「兄ちゃん⋯」
すると、学校帰りの子供たちの声が聞こえてくる。
「もう行きな、僕に構うと仲間はずれにされちゃうよ」
「いや、まだ話してたいもん⋯!」
「お願いだから⋯」
少し不満そうな顔をして足早に僕のもとを離れて行った。
そう、僕は村の大半の人に好かれていない。理由は明白だ。
3年前のある事件があってから僕は村の人々に嫌われている。
「もう3年か⋯」
そう一言呟いた時、玄関の扉を叩く音がする。
「誰ですか⋯?」
「神の使いの者で御座います。おめでとうございます、生贄に選ばれました。今夜この村を立ち、明日の朝神様の元へ着くご予定です。」
「神の使い⋯?」
頭が回らなかった。僕が生贄?意味がわからない。きっと何かの間違いだ。そう信じて疑わなかった。
「何かの間違いじゃないですか?僕が生贄なんて⋯」
「そうで御座いましたか。再度確認いたします。」
そう言ってどこかえ消えてしまった。
「なんだ、やっぱり僕じゃない⋯」
「ご確認致しましたか、貴方様で間違っておりません。今夜、またお迎えにあがりますので準備をよろしくお願い致します」
「いや⋯なんで僕が⋯!」
白い煙と共に神の使いは消えてしまった。
生贄と聞いてまず真っ先に頭に浮かんだのは湊音の事だった。あの子には伝えなきゃならない。
そう思って家を飛び出した。
「何処にいるんだ、湊音」
そう言いながら必死に探した。学校近くの公園も、子供がよく集まっている平地にも行った。だが、湊音の姿は見えなかった。
「はぁ、湊音。お前がどこで何してるか、僕には知らないことだらけらしい」
そう呟いた時、丁度湊音が前を通り掛かった。
「湊音!」
「兄ちゃん、なんでこんなとこに⋯?」
不安そうな顔で駆け寄ってきた。きっとさっきのことで不安が増しているのだろう。
「あ⋯大丈夫。大事な事を伝えに来ただけなんだ湊音。僕、生贄に選ばれちゃったよ。今日で最後だ」
「兄ちゃん、行かないでよ⋯」
今にも泣きそうな顔で僕を呼ぶ。僕も涙をグッと堪えて湊音を抱き寄せる。
「湊音、このことは湊音にしか言ってないんだ。なんでか分かる?湊音が僕の中で一番大切な人だからだよ」
脳内で、湊音との思い出が再生される。コソコソ隠れて一緒に遊んだ日、どうでもいいことで笑った日、どれもこれも大切な思い出ばかりで言葉では言い表せない感情が襲ってきた。
溢れ出た涙を拭って湊音を見つめる
「⋯何?兄ちゃん」
「湊音、大好きだよ。これだけは忘れないで、湊音だけが僕の友達であり家族なんだ」
「兄ちゃん、なんで生贄なの⋯?」
ぐしゃぐしゃの顔で湊音は言う。僕も涙を流しながら答える。
「わかんない、なんでだろうね」
泣いている。だけど幸せそうな笑みがこぼれる。
「最後だもんね、笑ってお別れしなくちゃ」
湊音は僕に笑顔をくれた。僕も笑って湊音を抱きしめた。
その日の夜。家に戻ると、もう神の使いが来ていた。
「予定が少し遅れそうです⋯。もう準備はお済みでしょうか?よろしければここに腰かけてお待ちください」
「すみません⋯」
謝りながら椅子のようなところに腰かける。すると神の使いが大きな鳥に変化して空を舞った。空から見る村はとても綺麗で、いつもより近い星が僕を照らしているようだった。