香夜はフラフラと無意識ながらも水無月に迷わないように案内され部屋に辿り着くと座りこんでしまった。

「大丈夫エマ?どして帰りたくないエマか?」
「……なんとなくだよ」
無理矢理笑顔を作り、荷物を置いた方に目を向ける。
荷物の中には香夜本人は記憶がないが話では漂流してきたらしく、その時に持ってきたバッグと着ていた服があった。
服はまだ湿っている。
香夜はバッグの中を確認しスマホを取り出した。
電源を入れるが防水とはいえスマホも壊れて動かない。

「水無月ちゃんだっけ?この島には誰かいるの?」
「翡翠様とオイラたち翡翠様の使いの動物だけエマね」
水無月は香夜のスマホの黒い画面を興味深そうに嘴でツンツンしていた。


「そっか……どうしたら翡翠様のお側にいられるかな」
「そうエマね〜神子になるとか〜?」
首を捻ると雪の妖精シマエナガと呼ばれるだけあってあざと可愛い水無月。

「神子って何する人?」
「神の代弁者や人間とアヤカシと神の中立や神のお世話係ですエマね」
「翡翠様は神子いるの?」
水無月はブンブンと首を横に振り、またスマホをツンツンしたり噛んだりしていた。

(たしか神通力があればなれるんだよね…)

「私、翡翠様の神子になる!」
香夜は拳を掲げた。


「エマっ?」