冷淡な玄武様はオッドアイの神子の愛に溺れる

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翡翠に帰宅したと伝えようと翡翠のもとに行くと「うわっ」と小さく声を出してしまった。

翡翠の座る席の向かいには乙姫がいた。

『遅いわ!どこほっつき歩いてたのじゃ!ほんと使えん鼻垂れ娘じゃの!』
「学校ですけど……」
ドブ娘の次は鼻垂れ娘…鼻は垂れてないが酷い言われようだ。

『妾は昼からずーっとお前を待ってたんじゃぞ!』
「私を?」
翡翠ならわかるがなぜ自分?と疑問だった。

『鼻垂れ娘の部屋に連れてけ。話がある』
はてなマークがたくさん浮かんだが了承し、まずは翡翠に帰宅を報告と買い物と余ったお金を返す。
翡翠は買い物の品は受け取ったが、お金は今後のために取っておくようにと受け取りを拒否。

「ちなみに翡翠様が渡されるお金って偽物じゃないですよね?」
『違いますよ』
以前、香夜を海に沈めて殺す計画を家族はやった。
偽札を渡すことで警察に殺人を発覚させ、更に偽札製造疑惑をかけ更に罰を与える嫌がらせ?を翡翠はした。
翡翠のことも香夜が家族と決別した日の記憶は神パワーで消した。
香夜は死んだことになっているのでもう戻れない。

ついでに香夜に手を出そうとした井澤琢磨という政治家の息子は政治家の父親の汚職問題がかなり黒く、琢磨の犯罪スレスレの行為がバレて地に落ちたと翡翠から聞いた。


「乙姫様からまたキスされたのですか?」
『きす?接吻のことならされましたが何か?』
大嫌いといいながら拒否をしない翡翠にモヤモヤした。恋人ですらないので文句が言えないのが更にもモヤモヤが募る。

『お前は無反応すぎてつまらぬ!鼻垂れ娘、はよ部屋連れていかんか!』
『ならばしなければいいでしょうに…めんどくさい方ですね』
『うるさいわ!』
グチグチ文句を垂れる乙姫を遮るように部屋に案内する。

『馬小屋じゃなくてお前の部屋に案内せぇと言ったはずじゃが?妾を馬鹿にしてるのかぇ?』
『いえ、ここが私の部屋です』
え?マジで?と言いたげな表情をする乙姫。

とりあえず座ってもらい、お茶を淹れると部屋を出ようてするが止められる。香夜も乙姫の向かいの席に座ると乙姫は無言で香夜の顔をじっくり見られた。
しばらく無言で見ていた乙姫は香夜の両頰をつねったりプニプニしたりと不思議なモノでも見ているかのような表情をしていた。

「何をするんですかぁ〜〜」
『不思議じゃ…お父上様から聞いたぞ。妾も神通力があるのは気づいておったが…だからといって翡翠は神子にする必要なかったと。冷酷で誰に対しても塩対応しかせぬ翡翠が神子を持つ気になんてとな』

白虎の風雅も同じことを言っていた。
香夜に聞かれても翡翠が何を考えているのかわからないので香夜が知りたいくらいだ。

『……妾の話をしてもよいか?妾は美と海を司る神じゃ。日本には妾ですら把握できぬほどの神がおる。翡翠も海を司る神じゃ』

香夜もたくさんの神様がいて某県の某神社に神様が集まる時期があるとかないとか聞いたことがある。

『妾はこの美貌に自信がある。振り向かぬ男などおらんくらいにな。お父上様に翡翠の番にならないかと打診された時は最初は嫌々じゃったが会うだけでもと煩いので会ったんじゃ。翡翠は男にしてはもったいない程の美しい顔立ちに妾は一目惚れした』

神様は翡翠と風雅しか知らないがどちらも絶世の美男子だ。
気持ちはわかると頷く香夜。

『だが、しかーし!翡翠は妾を見ても無関心!無視!無表情!無!無!無〜!!妾に振り向かぬ男など初めてじゃ!妾の自尊心は傷ついた!!絶対あやつを惚れさせ、番になってやるとな!!』

乙姫を叫ぶように翡翠に対して不平不満を口にする。
「ちょっとわかるかも…」と共感し何度も頷く。

『妾はどんなに気を引こうとしても無関心…そんな関係を続けて数百年……なんの進展もせぬ』

テーブルに拳をドンッと叩き悔しそうな乙姫。
なんだか可哀想になってきた香夜はなんて声を掛けるべきか悩んでいた。

『妾には進展がないのに翡翠にはあった…それが鼻垂れ娘、お前じゃーー!!』
「え?え?」
『妾は翡翠にハッキリと大嫌いと言われた。愛もないとも…翡翠はお前は受け入れた…なぜじゃ?』

ギロリと睨む乙姫にビビりながらも正直、困る。

「私は翡翠様のことが好きですが、恋愛どころか番も不要だと言っておりましたし、私が翡翠様を好きな気持ちは伝わってません。証明しろとも言われましたが愛は見えないから伝えにくくて……」
喋りながらも気落ちしていく。
小学生の頃に男友達はいたが恋愛対象じゃないし年頃になると家族からの虐めやバイトで恋愛経験が皆無。
経験があれば少しは…と後悔したほど。

『翡翠はお前を見る目が優しいのじゃ…妾には向けられたこともない…』
「そんなことは……」
『あるわ!翡翠は無表情でも眉毛が微妙に反応するのじゃ!』
わかりにくすぎる……

『お前を好きかわからぬが気に入っているのは絶対間違いない!じゃから不思議なのじゃ!妾に比べて貧相でちんちくりんのマヌケそうな下界の女が妾に劣るなんてありえぬ!』
初対面の時から酷い言われようだが、乙姫の美貌の力か嫌な気分にならない。
キスだけは嫌な気分なので、やめていただきたいが。

『鼻垂れ娘、名はなんと申す!』
「碧川香夜です」
『香夜!お前を妾のライバルと認めてやるわ!妾が翡翠を落とす!翡翠が香夜を選ぶなら妾は身を引く!お父上様に番解消を報告してやるぞよ!』

香夜を指で指し高々と宣言する乙姫。
香夜はテンションに付いていけない。