冷淡な玄武様はオッドアイの神子の愛に溺れる

乙姫は香夜の存在に気づくと更に唇を重ねる。
翡翠は目を開けたままで動かない。

『ドブ娘は使えぬだけではなく気を遣うことすら出来んとはな……翡翠、早うこの召使いを解雇するのじゃ!』
香夜は心臓の鼓動が早く息が荒く息苦しい。
この場から逃げ出したいが足が動かない。

「さっきから聞いてれば香夜のこと悪く言うなエマ!翡翠様から見向きもされないクセにーエマっ!」
肩に乗っていた水無月が香夜に対しての言葉が許せず反論する。

『なんじゃ豆大福!翡翠と婚姻の際は豆大福とドブ娘を捨ててやるぞぇ』
「オイラは豆大福じゃないエマよ!!」
水無月は乙姫に体当たりや小さな嘴で攻撃するがシマエナガの体重は10gもないので、うっとおしいだけで全く効かない。
乙姫と水無月がギャーギャーやっていると翡翠が口を開く。

『香夜は神の命により保護をしているだけです』
『ほぅ。では遅かれ早かれいなくなるのじゃな。これは朗報である』
『そしてお前もです』
ケラケラ笑う乙姫は翡翠の言葉に笑うのをやめ、ギョッとする。

『我らが神がお前と婚姻するようにと命令を受け、私は神に従ったのみ…』
『な、な、なんじゃとおおおっ!!妾が好きだからではないのかぇ?妾は…妾は……』
大きな声で叫ぶと大袈裟な仕草をするほど混乱しているようだった。
翡翠は乙姫の混乱を無視し話しを続ける。

『お前もお父上殿が決めたから従っただけでしょう?私たちの間には愛など恋などの感情はありませんよ。少なくとも私はね』
『じゃからなかなか妾の正式に番になってはくれなかったのか?……神の命なら早よ妾を番にしてたもれ!』
『私は神の命ならばと受け入れましたが、正式な番にする時期は任せるとのことでした。私は命令に従うだけでお前のことは大嫌いです』
『妾との接吻は受け入れたじゃろ!それは愛し合ってるからこそ受け入れたはずじゃ!』
『接吻など何になるのでしょう?私はそんなモノに興味も感情もない…』

翡翠の毒舌攻撃にブチギレた乙姫は『気分を害した!帰る!』とボーっと立ったままの香夜を突き飛ばし帰っていった。
翡翠は水無月を悪く言われ怒っていた。乙姫が去ると優しい表情になり愛でるように水無月を撫でる。

『香夜、こぼしたお茶を片付けなさい。それが終わったら私の茶を淹れ直すように』
「は、はいっ」
香夜は慌てて片付けをする。
香夜が雑巾を持ってくる間、水無月は学校の様子を翡翠に報告していた。