金髪の女性が運ばれたのは【氷神家(ひかみけ)】。
氷神家は北ノ島の住人たちを纏める人間の代表であり、4つの島が出来た頃に神の神子が4人の霊力のある人間に神通力を分け与え、それぞれの島に神獣や人間、アヤカシの中立的な立ち位置にと1人の神子を置いた。
氷神家は初代神子が先祖にいる家系でもある。

金髪の女性は和室に寝かされ体を拭いてもらい医者に診察してもらったが気を失っているだけで問題なしだった。
医者は診察を終え、氷神家を後にする。

部屋には翡翠と水無月、氷神家の当主だけ。


『…………』
翡翠は寝ている女性をずっと見ていた。

「……」
氷神家の当主は色々と思うことはあったが翡翠の言葉を待った。

『……なるほど……だがなぜ……………。氷神の主人よ、私《わたくし》が戻るまで彼女を頼みます。逃げるようなら牢屋にでも入れておきなさい』
翡翠は独り言を呟くと突然立ち上がり部屋を後にした。




翡翠は一度、天界へ戻った。

翡翠が気になった点がいくつかあった。

「どこの島からやってきたのか」「どうやって来たのか」など他にも気になることはあったがまずはこの2つ。

本人が目を覚ませば解ることだが、そういう人間は総じて「覚えていない」「わからない」と答える。
死にかけたりショックなどで記憶をなくしたのだろうと理解しているので翡翠としても別に構わない。
構わないのだが尚更、疑問を感じていた。

北ノ島は他の島より広く、島民は約2000〜3000人ほど。その住人たちは全員が顔見知りで、知らない人間などいない。
つまり北ノ島の者ではないのなら他の島の者という可能性が高いため、他の四神に伝達をし確認を取る必要がある。

どうやって来たのかだが、北ノ島には左右に小さな無人島が1つずつあり、島と2つの小さな島のまわりは船が近づくと渦潮が発生し、霊力がない人間や船を避けるように出来ている。
物資が届く船は翡翠が神通力を込めた特別な船なので北ノ島へ辿り着ける。

金髪の女性は霊力があったから渦潮が発生せず、島へ辿り着いたのは納得していたが、翡翠が北ノ島に行く途中に北ノ島付近にいるイルカ達に尋ねると船が何隻か通ったが船の海難事故がなかった事、人間が溺れているならイルカ達が気づくはずだが……


「オイラには難しいこと考えてるエマね〜」
腕を組み、険しい顔をしている翡翠に水無月は呆れていた。