━━━━天界・玄武神殿。

天界は神々が住む神聖な場所。天界には神だけではなく、神に認められた神通力を持つ人間も稀に住んでいる。


ある神には眷属(けんぞく)である玄武・白虎・青龍・朱雀の神獣がおり、玄武神殿は亀に蛇の尻尾がある神獣である玄武専用に与えられた建物で玄武は住居兼仕事場にしている。


玄武【翡翠(ひすい)】。
普段は神獣の姿ではなく人型で過ごしていた。
胸元ほどの黒髪をひとまとめに結び、ミントグリーンの瞳に眼鏡を掛けた、見た目は20代後半くらいの男性で和装と洋装のような不思議な服を着ている。


翡翠は神殿内の書庫で調べものをしていた。


「翡翠様ぁ!大変エマ〜!!」
翡翠の元にやってきたのは翡翠の使い(従者)である雪の妖精と呼ばれているシマエナガの「水無月(みなづき)」だ。
元はただの動物だったが翡翠の神通力を与えられ、従者として主人である翡翠の世話や命令による任務遂行をしている。
水無月の主な仕事は翡翠が担当している北ノ島の様子を報告していた。



『どうしました?また大したことないんでしょう…』
水無月の慌てんぼうな性格は知っているのでため息をつきながら、翡翠は水無月の方を向かず巻物に目を通していた。



「大事件エマよ〜!北ノ島に人間が漂流してきたエマぁ〜!!」



水無月に目を向け少し驚いていた。


『漂流?……すぐに北ノ島に向かいましょう』