家に帰ると専業主婦の母親が嫌な顔をする。

「ただいま。あのね…スマホ買って欲しいんだけど」「バイト代で買いなさいよ!この金食い虫!アンタを駆除する殺虫剤になら金掛けてやるのにね」
「…バイト辞めさせたのにお金ないよ」

家族たちの嫌味はスルーが一番だと聞かないふりをする。

スマホなら買ってもらえるかと思ったが、もしかしたら難しいかもしれない。

両親はキッカケは分からないが、香夜の存在を知り香夜を「見世物」にして自分たちが目立ちたい注目されたいからと時間をかけてでも香夜を手に入れ引き取られた。
両親も姉も優しくて幸せだった。

毛嫌いされるようになっても「仲の良い幸せ家族」として近所や親戚の前では通っているので世間体を気にする両親たちは香夜を虐めつつも他者の前では香夜に優しい。

「世間体を気にするなら最初からやめて!」「施設にかえして!」と言ったが「香夜が余計な事を知らなければ問題ないだろう」と施設にすら帰れず今に至る。

スマホも世間体もあるが、GPS付きで香夜が妙な真似をしないように監視用だったので買ってくれると思った。

素直にお金貸してくれると思ってないので、スマホのお金は水無月を送る旅費にしようとしてるけど…なんて言えない。
後々酷いことされても水無月を無事に返してあげたかった。

(バイト探すしかないか…私の髪や目で面接落とされるのよね…あのコンビニに店長さん優しかったな。また働けないか頼んでみょうかな…水無月ちゃんごめんね…)



姉のお古の服を着て、合コン会場のお店に入る。
合コンなんて御免だが、食事は陽朝が狙っている政治家の息子とやらが持つらしくタダ飯にありつけるなら行く価値はある。
食べたら帰れば姉たちから何も言われないだろう。