漂流した時に持っていたらしい斜め掛けショルダーバッグを持ち、重い足取りで外に出ると…

「ええええっ!!!」

海辺には映画で観たような怪獣ガ◯ラ…巨大な亀がいた。
香夜は顎が外れるんじゃないかと思うほど驚き、尻もちをついてしまった。

『来ましたか。では乗りなさい』

「ひひひ…翡翠なななんですか!」
巨大な亀から翡翠の声が聞こえ、動揺した。
その場から動かない香夜に痺れを切らしたのか、香夜を尻尾の蛇で巻き付け甲羅に乱暴に乗せる。

「香夜!」
「あ、水無月ちゃん。もしかして翡翠様のお供?」「半分違うエマっ!オイラは翡翠様に冷たくされてる香夜が心配だったから付いていくエマよ!」
先に甲羅の上にいた水無月は香夜の姿を見つけ、てちてちと歩きながら近寄ってくる。

『素性のわからない者に優しくする理由などありません』
「翡翠様は素性がわかっても優しくないエマよ〜!そんなだから他の四神に嫌われてるエマ!友達いないぼっちのクセに〜エマぁ!!」
『うるさい者がいなくて清々しますがね』
「そういうとこがダメダメなんだエマよ〜」

水無月は翡翠(神獣)の頭の上まで飛び、嘴で攻撃している。
香夜はそんな光景にポカーンとしていた。

『時間の無駄です。行きますよ』

翡翠(神獣)はゆっくりと手足だけを海水に入れ、泳ぎだす。

「こんな巨大な生き物がいたら誰かに見つかるんじゃないですか?」
『私の神通力で私自身と貴女たちの姿を消していますから安心してください』

「へぇ〜凄い」
「驚いたエマか?この翡翠様は玄武の神獣姿エマよ」「しんじゅう?」
「本来の姿エマ!その方が便利なこと多いから普段は人型になってるって翡翠様が言ってたエマ!」


東京に着くまでの間、翡翠(神獣)の甲羅の上で水無月とお喋りをしていた。
話題のほとんどは翡翠の事で、動物には優しいとか好きな色は緑色とかかなり酒豪とか硬い枕が好みなど…

水無月が楽しそうに翡翠の話をしていると香夜は翡翠の事を純粋にもっと知りたいと思うようになりつつも、内心ではかなり焦っていた。



もうすぐ東京に着いてしまう………と。