溢した言葉に反応するように
ぐったりしていた彼女の目が開く


「!……平気?」

「…」


まだ意識がぼんやりしているのか
彼女は、じっと俺を見つめて微動だにしない


「きみ、溺れて、そのまま流されたんたよ
今はもう苦しくない?ちゃんと息できてる?」

「……」


俺が声をかけても
彼女は何も言葉を返さない
ただただ黙って、俺を見つめてる

混乱して
頭が真っ白になっているのかもしれない


とりあえず、あの家に移動しようと
立ち上がろうとした瞬間
彼女の手がゆっくり伸びて、俺の顔に触れた


素肌に直に触れる手の感触

つけていた面が
いつの間にか外れていたことに気づく



「………………た」



小さく、彼女の唇が動く



「え?」



「…………………やっと、見つけた」



唇から溢れた言葉は
とても、とても嬉しそうで

喜びと幸せを、噛み締めるように

でも、瞳には涙が滲んでいて



「ずっとずっと、あなたを探してた」



「あなたに会いたかった」



意識が混濁していて
俺に誰かの姿を重ねて見てる訳じゃなく

彼女は確かに「俺」を見ていた

俺に向けて、言葉を放っていた




「……………………きみは……………」




…………知っている





俺は、この子を





知っている