≪古文≫
醒睡笑(せいすいしょう)より「(いはひ(い))((ぐ))るもいな(もの)

61 けしからず。ものごとにいはふ者ありて。()三郎といふ中間(ちゅうげん)に。大晦日(つごもり)(ばん)いひをしへけるは、今宵(こよひ)はつねよりとくやとに(かへ)りやすみ。あすは早々(さうさう)おきて(きた)り。(かど)をたゝけ。内よりたそやととふ時。(ふく)(かみ)にて候とこたへよ。すなはち()をあけて。よびいれんと。ねんごろにいひふくめてのち。亭主は心にかけ、(にはとり)のなくと。(おなし(じ))やうにおきて。門にまちゐけり。(後略)


≪あらすじ≫
信心深く、現を担ぐ者がいた。
ある大晦日の晩。使用人に「今夜は早く帰り、明日の朝は早く来て門を叩きなさい。誰だ、と尋ねられたら『福の神だ』と答えるように」と告げたが……。