まさか、ここまで噂が広がっているとは。

 いえ、新聞部2年の彼はちゃんと約束を守っていました。
 昔とは違うんですね。

 昔の新聞部には大層無茶苦茶されたので…。
 当時あの話をでっち上げた…名前はなんでしたっけね。すっかり忘れたし、まあ思い出したくもありませんが。
 あの時でっち上げられた話が今でもこうして残っている。

 いったい、何人の人がこの記事を全て読んでしまったんでしょうね。
 あなたもここまで読んでしまったのでしょう?

 …もし本当に彼女が非業の死を遂げた幽霊だったのなら、これでも正解なんですけどね。

 彼女はあそこにはいません。
 彼女は幽霊ではありません。

 僕は彼女の友人だったのでよく知ってますよ。
 彼女は至って普通の高校生でした。
 病気がちだったので、それこそ肖像をみても分からないくらいには教室に来ていなかった。
 最後だって病院のベッドの上でしたよ。
 そう、だからあそこに彼女はいないんです。

 一昨年僕が教師としてこの学校に戻ってきてしまったのだって、きっとただの偶然のはず。

 部活中、美術室の窓からよく見えましたよ。
 向かいの保健室から手を振っていました。
 そうです、手を振っていたんです。

 いったいあれらの怪談で目撃されている人はだれなんですか?
 彼女は一体、何になったんですか?


 最近、声がするんですよ。おーいって
 ちょうどこの記事が貼られだした時くらいからですかね…。
 ああほら、今も…。あなたには聞こえませんか?
 おーい、おーい、おーいって
 彼女の声ってこんな感じだったんですかね。今じゃもうその判別だってできないのに。

 …彼女はこんなところにはいなかったはずなんです。
 絵なんてもっとはやくに燃やしてしまえばよかった。

 もう、彼女のことは、忘れてください。
 どうか、彼女のことを、放してあげてください。