「!?」
全員がその場に固まる。
秋雄の身体が、ドスンと窓の向こうの地面に崩れ落ちたのが分かった。
「一体何が……」
震える声を上げたのは一樹だ。女子三人は目の前で起こったことに、ただただ呆然として震えている。
「死んでる」
秋雄の様子を確認しに行った真紘が呟いたのと、亜美が「きゃあっ!」と悲鳴を上げたのは同時だった。
「こ、これはどういうこと!?」
春香が叫ぶ。電気ウナギくんは呆れた様子で「あーあ」とため息を吐いた。
「ちゃんとルールに“指示なく教室から出ると命を失います”って書いたのに。馬鹿だなあ、秋雄くんは」
先ほどまでとは打って変わって、ゾッとするような低い声だった。電気ウナギくんの言葉に、全員が黒板の方に視線を移す。確かに書いてある。指示なく教室から出ると命を失う、と。
目の前で秋雄が死んで、ようやく全員が事の大きさを実感させられていた。
もしかして、窓が開いていたのはわざとか?
外に逃げられることを予想させておいて、実際は誰かがそこから逃げ出そうとする展開を待っていた。「勝手に外に出ると命を失う」ということを、全員に知らしめるために、わざと、罠を——。
「ど、どうやって殺したんだ……!」
発狂した様子の一樹が電気ウナギくんに食ってかかる。僕も同じ疑問を抱いた。きっとこの場にいる全員が同じことを考えているだろう。
「あれ、気づかなかった? 皆さんの左胸についている電気パッド。そこに、ワタシの方で致死量の電流を流すことができます。ちなみにそれを勝手に外すと問答無用で“命を失う”ので、気をつけてくださいね」
電気ウナギくんの言葉に、僕は咄嗟に自分の着ているシャツを捲りあげる。そこには確かに、一辺が十cmほどの正方形の電気パッドが装着されていた。言うなればAEDで使われるパッドのようなものだ。
違和感は覚えていた。けれど、この奇怪な状況を理解しようと必死で、自分の服の下を確認する時間がなかった。
全員が電気パッドの存在を認識したのを確認した電気ウナギくんは続けてこう言った。
「さて、プレイヤーが一人減ってしまったから、今からやるゲームは最大八ラウンドじゃなくて、七ラウンドに変更になりました。一人一回“人質”になったとして、最大七ラウンド。その前に誰かが脱落してしまったらどんどんゲームの回数は減っていくから気をつけてね。なんてったって、生き残るには“人質”になる他に、“ゲームに参加してクリアする”のが条件なんだからね」
電気ウナギくんに言われてはたと気づく。
確かに彼の言う通り、誰かが序盤でゲームに失敗し、二人分の命が失われてしまえば、その分ゲーム回数が減ってしまう。そうなると、必然的に自分が参加できるゲームも減ってしまうわけで、生き残れる可能性が低くなる。
最終的にはゲームに参加する人を決める、椅子取り合戦になることが予想される。
「それと、勘違いしないでほしいのは、ワタシは何も皆さんに意地悪しようと思ってこんなゲームをしようとしているわけではないってこと。これも、皆さんの願いを叶えるためだということをお忘れなく!」
「願いを叶えるため……?」
どういう意味だろう。黒板のルールの最後には確かに「最後まで生き残った人は、なんでも願いを叶えることができます」って書いてあるけれど。命を賭けてまで、こんなゲームしたいと思う人間がどれだけいるだろうか。
「さて、色々と不満に思っているところはあると思うけど、早速ゲームを開始します。まずは第一ゲーム。人質は——貴田春香さんです!」
「あ、あたし!?」
一番最初に名前を呼ばれるとは思ってなかったのか、春香の肩がビクンと跳ねた。
「ちょっと、どうしてあたしが——」
「文句を言っても無駄です。貴田春香さんが人質です。さて、今から五分以内にゲームの参加者を一人決めてください。五分以内に参加者が現れなければ、貴田春香さんの命が失われます。それでは、ゲームスタート!」
全員がその場に固まる。
秋雄の身体が、ドスンと窓の向こうの地面に崩れ落ちたのが分かった。
「一体何が……」
震える声を上げたのは一樹だ。女子三人は目の前で起こったことに、ただただ呆然として震えている。
「死んでる」
秋雄の様子を確認しに行った真紘が呟いたのと、亜美が「きゃあっ!」と悲鳴を上げたのは同時だった。
「こ、これはどういうこと!?」
春香が叫ぶ。電気ウナギくんは呆れた様子で「あーあ」とため息を吐いた。
「ちゃんとルールに“指示なく教室から出ると命を失います”って書いたのに。馬鹿だなあ、秋雄くんは」
先ほどまでとは打って変わって、ゾッとするような低い声だった。電気ウナギくんの言葉に、全員が黒板の方に視線を移す。確かに書いてある。指示なく教室から出ると命を失う、と。
目の前で秋雄が死んで、ようやく全員が事の大きさを実感させられていた。
もしかして、窓が開いていたのはわざとか?
外に逃げられることを予想させておいて、実際は誰かがそこから逃げ出そうとする展開を待っていた。「勝手に外に出ると命を失う」ということを、全員に知らしめるために、わざと、罠を——。
「ど、どうやって殺したんだ……!」
発狂した様子の一樹が電気ウナギくんに食ってかかる。僕も同じ疑問を抱いた。きっとこの場にいる全員が同じことを考えているだろう。
「あれ、気づかなかった? 皆さんの左胸についている電気パッド。そこに、ワタシの方で致死量の電流を流すことができます。ちなみにそれを勝手に外すと問答無用で“命を失う”ので、気をつけてくださいね」
電気ウナギくんの言葉に、僕は咄嗟に自分の着ているシャツを捲りあげる。そこには確かに、一辺が十cmほどの正方形の電気パッドが装着されていた。言うなればAEDで使われるパッドのようなものだ。
違和感は覚えていた。けれど、この奇怪な状況を理解しようと必死で、自分の服の下を確認する時間がなかった。
全員が電気パッドの存在を認識したのを確認した電気ウナギくんは続けてこう言った。
「さて、プレイヤーが一人減ってしまったから、今からやるゲームは最大八ラウンドじゃなくて、七ラウンドに変更になりました。一人一回“人質”になったとして、最大七ラウンド。その前に誰かが脱落してしまったらどんどんゲームの回数は減っていくから気をつけてね。なんてったって、生き残るには“人質”になる他に、“ゲームに参加してクリアする”のが条件なんだからね」
電気ウナギくんに言われてはたと気づく。
確かに彼の言う通り、誰かが序盤でゲームに失敗し、二人分の命が失われてしまえば、その分ゲーム回数が減ってしまう。そうなると、必然的に自分が参加できるゲームも減ってしまうわけで、生き残れる可能性が低くなる。
最終的にはゲームに参加する人を決める、椅子取り合戦になることが予想される。
「それと、勘違いしないでほしいのは、ワタシは何も皆さんに意地悪しようと思ってこんなゲームをしようとしているわけではないってこと。これも、皆さんの願いを叶えるためだということをお忘れなく!」
「願いを叶えるため……?」
どういう意味だろう。黒板のルールの最後には確かに「最後まで生き残った人は、なんでも願いを叶えることができます」って書いてあるけれど。命を賭けてまで、こんなゲームしたいと思う人間がどれだけいるだろうか。
「さて、色々と不満に思っているところはあると思うけど、早速ゲームを開始します。まずは第一ゲーム。人質は——貴田春香さんです!」
「あ、あたし!?」
一番最初に名前を呼ばれるとは思ってなかったのか、春香の肩がビクンと跳ねた。
「ちょっと、どうしてあたしが——」
「文句を言っても無駄です。貴田春香さんが人質です。さて、今から五分以内にゲームの参加者を一人決めてください。五分以内に参加者が現れなければ、貴田春香さんの命が失われます。それでは、ゲームスタート!」