拝啓、やがて星になる君へ

 翌日、授業を終えて放課後になり、下校しようとバッグを持ち席を立つと、声をかけられた。

 「星乃くん!」

 見ると、昨日僕を呼び止めた風間さんが、今日も満面の笑みで立っている。

 「どうかな、考えてくれたかな、私と文芸部を創ること」

 僕はため息をついた。昨日あれだけ冷たく断ったのに、諦めていなかったのか。

 「だから、僕にその気はないんだから、他の人にお願いした方が効率的だよ」

 「ふふーん、そう言うと思って、今日は(すけ)()を用意しました」

 不敵にニヤリと笑う風間さんの後ろから、眼鏡をかけた小柄な女子生徒が一人、おずおずと顔を出した。

 「あ、(はな)()()()、です……どうも」

 そう言って小さく頭を下げる。長めの前髪で表情が隠れた。

 風間さんが満足げな表情で続ける。

 「麻友ちゃんはね、文芸部の設立に協力してくれるんだってさ。ね?」

 彼女の言葉に、花部さんはこくんとうなずいた。

 「あたし、本が好きで、高校生になったら文芸部に入ろうと思ってたんですけど、この学校、そういうのがなくてがっかりしてたんです。そしたら、風間さんが声かけてくれて」

 「先生に訊いたら、部活を創るには部員が四人必要なんだって。だから、これであと一人だね!」

 僕は考える。部活を創るには四人が必要。そして今集まったのは、風間さん、花部さんの二人。

 「……あと二人じゃないの?」

 「やだなあ、私と、麻友ちゃんと、」

 風間さんは笑いながら一人ずつ指をさしていく。その指先は三番目に僕に向けられた。

 「星乃くんで、三人じゃん。ほら、あと一人!」

 「なんで勝手に僕をカウントするんだよ……やらないって言ってるだろ。あと二人、頑張って探してね」

 風間さんたちの顔を見ないように視線を背け、足早に教室を出る。今日は廊下までついてくることはなかった。