八津谷担当のエリアではテーブルの上に小さな野球場が再現されていて、中央に冊子が積まれており、そのそばにはグローブとボールが、どこか物悲しげに置かれている。使い込まれた物に見えるから、彼が愛用してきたものだろうか。

　スコアボードも用意されていて、物語の中でもクライマックスとなるシーンの得点が書かれていた。隣にはテーブルゲームの野球盤も置かれていて、休憩に来た人が遊べるようになっている。これは野球好きな人の興味を引くだろう。

　花部さんのエリアは、落語の寄席を表現するように飾られていた。演者の名前などが書かれるあの縦長の紙、たしか〝めくり〟と言うんだったか、そのミニチュアに、部誌のタイトル〈風花星谷〉が書かれている。

　高座の上には小さめの座布団が置かれ、そこに座っているみたいに部誌が立てかけられており、まるでこれから冊子が落語を語り始めるかのような、コミカルな可笑しさがある。

　花部さん、八津谷、僕の三人も衣装に着替え終わると、夏美は部屋の中央でぐるりと四方を見渡してから、満足げな表情で言う。

　「うん、準備は完璧だね。みんなそれぞれ個性的で、目を引く展示になってて、最高の出来だよ。あとは開場してお客さんが来るのを待つだけ！　ドキドキするね！」

　僕らは顔を見合わせ、力強くうなずいた。