拝啓、やがて星になる君へ

 夕食の後、ベッドに寝転んで冊子を開く。

 自分の作品は原稿用紙でもう何度も読み返したから面白くはないけれど、やはりこうして活字になって、本の形で手にするというのは新鮮な感動がある。

 八津谷の物語は、聞いていた通り野球を題材にして、瑞々しい恋愛要素を添えたものだった。経験者だからこそ書ける臨場感のある描写で、読んでいると自分が真夏の甲子園のマウンドに立っているような気分になる。

 花部さんの青春落語モノは、落語部に入った女子高生が奔走する物語。伝統的な落語のネタをちりばめつつ、現代の風刺やブラックユーモアが織り込まれていて、読んでいて笑ってしまった。本を読んで声を上げて笑うなんて、初めての経験だ。

 事前情報がなかった夏美のページは、意外にもSFミステリだった。今から百年ほど未来の日本が舞台で、密室殺人に立ち向かう探偵の話に引き込まれた。未来の世界の描写が妙にリアルで、百年後にはこんな技術があるのかと感心した後、そうかこれはフィクションだったと思い返して()(ちょう)した。

 読み終えて、満足感と共にゆっくり息を吐き出した。どの作品も面白く個性的で、自分には書けないものだ。メンバーごとのまとまりはないけれど、それぞれの作品は商業で出版されている短編集にも引けを取らないと感じるのは、思い上がりだろうか。

 ともかく、部誌第一号としては文句のないクオリティだと思う。あとは、どれだけの人が、この冊子を手にしてくれるか、だ。