拝啓、やがて星になる君へ

 そんなこんなで夏休みが始まって二週間ほどが経過した、八月十二日。

 いつものように書斎で夕方まで部活動をした後、僕たちは四人揃って外に出た。

 「ねえ、本当に山まで行くの? うちの庭でもいいんじゃない? それか、学校のグラウンドとかでも」

 僕の提言に、風間さんは首を横に振って言う。

 「それじゃダメなんだ。今日は裏山の見晴らし台でペルセウス座流星群を見る。そう決まってるんだから」

 今日はペルセウス座流星群の極大日。文芸部たるもの流星観測を(たしな)まねばならない、と風間さんが力説したのが一週間前。僕の家から近い山の中腹に、町を一望できる見晴らし台があって、みんなでそこに行って流星を見よう、と彼女は言っていた。

 「決まってるって、風間さんがそう決めたんだろ? だから君を説得しようとしてるんだ」

 「うーん、私が決めたんだけど、私だけじゃないっていうか……」

 「どういうこと? 顧問が指定してきたの?」

 文芸部顧問の岩崎先生は、部活動に対して相変わらず一切の干渉をしてこない。けれど部長である風間さんには個人的に指示を出しているのかもしれない、と思った。

 「違うよ、岩崎先生は放任で助かるねえ。まあ文化祭の時は頼ることもあるだろうけど」

 「じゃあ誰が決めてるのさ」

 「うーん、強いて言えば運命ってやつかなあ。まあ決まってることはしょうがないじゃない。夜のピクニックだと思って楽しく行こうよ」

 運命なんて言葉を持ち出されても納得できない僕に、八津谷が言う。

 「諦めろよ星乃。部長の気が簡単には変わらねえってのはもうよく分かってるだろ」

 「そういうことー」

 歩き出した彼らの後ろを、僕はため息と共についていく。