目覚めは、夢を叶えるものではなく、夢を叶えるために努力をする権利を、授かったにすぎなかった。
長い植物状態で衰弱した私の身体は、エリーに触れるのはおろか、声を出し、口から食事を取ることが出来るようになるまでだけでも、ひと月を要したのだ。
本当の苦しみは、ここから始まったといえる。
リハビリは壮絶だった。私は文字通り、血と汗を流し続けたのだった。
『私はエリーに触れ、彼女に愛を告白し、全ては過去のものとなるだろう』
私がこの夢を叶えたのは、実に半年後の話だ。
過酷なリハビリの間も、変わらずに私を励まし、助け続けてくれたエリーは、私の告白を涙とともに受け入れてくれた。
義理の兄妹であった私たちは法律手続きにいくらかの時間を要したが、私の目覚めから一年後のよく晴れた春の日、こじんまりとした教会で二人だけの結婚式を挙げた。
私には全てがあった──私には資産があり、名声があり、美貌があり、若さがあった。
そのどれもが、今の私にはない。
四年を棒に振った私は、もう大して若くはなかったし、四年前のテニスプレイヤーを覚えている者は稀だ。過去四年は私の財産を四分の一以下に切り崩しており、フェラーリは売りに出されていた。
「でも、美貌はまだあると思うわ。あの頃よりずっと柔らかい顔付きになって、私は今のウィルのほうが好きよ」
とエリーは言っているが、どうだろう……。