この頃すでに、私が植物人間となって四年が経とうとしていた。
季節は春で、しかし、例年より肌寒いゆっくりとした幕開けの春だった。
──というのは、すべて後から知った話だ。
私は諦めと夢の間を絶え間なく行き来しながら、時に絶望し、時に希望にしがみつき、そしてやはり絶望し……ということを繰り返していた。
季節や年月の感覚もあいまいで、時々自分がどこにいるのか、何をしているのか──もしくは何をしていないのか──が分からなかった。
つねに空いたベッドを待つ長蛇の列がある病院の一室で。
私は、死を恐れてはいなかった。
エリーが私のことを諦めても、それで彼女が楽になるのなら、歓迎すべきことだとさえ思っていた。
私が恐れていたのは……多分、エリーに愛を告白せずに生を終えることだった。
エリーの唇を知らずに終わることだった。
私は男女の快楽をむさぼりつくしていたというのに、エリーという最後の恋を前にして、キスの経験さえないような少年の心へ戻ってしまうのだ……。
死と引き換えに彼女の唇へ触れられるならば、私は千回でも死んだだろう。
終わりなく思えた冷たい冬の果てに現れた春が、私の死という形をしていたとしても。
ああ、エリー。
私はこの四年を後悔しないだろう。
こうして本当の君を見つけることが出来たこと。こうして君の声をゆっくりと聞き続けられたこと。君を愛することが出来たこと。それだけで私は幸せだったのだ。