しかし、そんな廃棄物同然の私の話などより、大切なものがあるのは承知している。
──エリーだ。
彼女がどうしているか知りたい者は多いだろう。
結論から言えば、彼女はカレッジを卒業した今でも、相変わらず私の元へ通い続けていて、私を生きた者として扱い、語りかけてくる、唯一の存在であり続けている。
ジョン・クラークソン医師とは付かず離れず……この頃になると、クラークソンはあまりのエリーの難攻不落ぶりにさすがに根を上げたのか、彼女に愛を語ることは少なくなっており、その代わりある新しい受付係の女性と徐々に親しい仲になっているらしかった。
「これでよかったのよね……」
エリーは少し寂しそうに言う。
ただし、もともと気の合う仲であったためか、兄と妹のようなクラークソンとエリーの関係は続いており、医者と患者の家族として、彼らは日々顔を合わせている。
私はクラークソンを男として尊敬せざるを得なくなっていた。
彼はエリーへの愛に見返りを求めず、彼を男として受け入れなかった彼女を恨むでもなく、医師として友人として、エリーを守り続けているのだ。
世の中とは広く深いもので──こんな見上げた男もいれば、私のような屑もいるわけだ。
私はクラークソンに嫉妬をしていたし、彼がエリーに近付けば殺意さえ覚えたが、いつしか「もし」という選択肢を受け入れ始めていた。
「もし」、エリーが誰かと結ばれるならば、その誰かとはジョン・クラークソンであるといい、と。