夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

「ちーっす!仲介屋でーす!」
 と元気な声が響いた。
その声に握りしめていた拳を開き、振り向く。
「ご苦労様です。」
 影が挨拶を返す。

仲介屋、この会社と依頼人を仲介してくれる、その名の通りの店だ。
その店員、ナツキだ。
20代の茶髪。元気が第一印象の、人懐っこい性格。

「どっかの酒屋か魚屋みたいに来るんじゃねぇよ。騒々しい。」
 俺は仲介屋に言う。
彼はタメ口を聞ける、数少ない年上の人だ。
「あぁ?どの口が聞いてんだ?」
 などと俺に軽く返答しながらも、
「久しぶりだなぁ、ハツキ!」
 と俺を呼び、頭を撫で回す。
「おい、久しぶりってほどじゃねぇだろ。ってか頭やめろ!」
 ナツキは俺のことをハツキ、と呼ぶ。
俺はちゃんと『ハヅキ』と呼んで欲しいのだが、「ハツキはハツキだろ?ってかどっちも一緒じゃん!」と聞く耳を持たない。

「あの、、葉月さん、、?」
 恐る恐る、という風に雨夜が俺に声をかけた。
「あ、そっか、雨夜は初めてだもんな。」
 今更ながら雨夜とナツキが初対面だったのに気づいた。
視線でこの人って誰ですか?と訴えている。

「この人、、」
 とナツキを紹介しようとした瞬間、
「君、ちょー可愛いじゃん!」
 とナツキの元気な声が響いた。
「誰?ハツキの彼女?な訳ねーよな!、、え!?新人?若いね!、、15歳?!ハツキより年下!ってことは、ハツキが先輩!?、、見えねー!、、雨夜ちゃんって言うんだ、よろしく!俺、仲介屋のナツキ!ホントはもう1人いるんだけど、また紹介するね〜!実はさ〜、此処にハツキ紹介したの俺なんだよね!」
 勝手に元気に喋り出したナツキ。
一度火がつくと喋りまくる。今言ったもう1人の仲介屋がいないと止まらなくなる。
ナツキとは小さい頃にお世話になっていた人で思わぬ場所で再会し、此処を紹介してもらった。
今でもタメ語で友好な関係だ。
「で、今回はハツキくんと雨夜ちゃんが担当ですね?了解でーす。依頼人は明日、午後4時にうちの事務所に来てもらうことになってますので。よろしくお願いしまーす!じゃ、俺はこれで!」
 散々喋り倒した後、足早に出て行った。

「なんか、、めちゃくちゃ、元気ですね。」
 雨夜がナツキが出て行った扉を見つめながら呟いた。