夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

「あ、えっと、その資料室の向かいが更衣室。ロッカーがあるから自分たちの荷物が置ける。もちろん着替えもできる。まぁ、俺はあんまり使ってないけど、、。」
 俺は慌てて話を続けた。
「あ、私もあまり使わないかもです。」
「え?」
「私、この会社の一室を借りてるんです。家族がいるんで。」
 しれっと告白。
「え?!そうだったの?」

──借りれるんだ、此処の部屋。しかも家族いたんだ、、。

「影さんが貸してくださいました。」
「家族って、、?」
「双子の妹たちが。」
 雨夜は優しい笑みを浮かばせた。
妹想いの優しい姉の顔をした。
「妹想いなんだな、、。」
 思わず本音を口にする。
「私なんて、、まだまだです。努力します。」
 自信がなさそうに俯いた。

「そんな気負わなくてもいいと思うけど。」
今でもお姉ちゃん、って感じなのに、まだ頑張る気?と思わず苦笑する。
「本当に、まだまだです。妹たちはまだ小さいので、私がしっかりしなきゃいけないんです、、。」
「うーん、俺は兄貴が1人だったから下の子のために、って感覚はわかんねぇけど、もう俺らがいるんだからそんな無理しなくてもいいんじゃねぇの?」
「え?」
 俺の言葉に雨夜が顔を上げた。
「だって、影や鈴さんがいるし、要さん、、は役に立つのかしらねぇけどみんな、仲間がいる。今の雨夜、無理しすぎてる気がする。もう十分頑張ってきただろ?だから、もう1人じゃないんだから、そんなに気を張らなくてもいいんじゃねぇか?、、もちろん俺もいる。」
 俺は拳を自分の胸に当てた。
「、、そうですね。ありがとうございます。少し気持ちが楽になりました。」
「少しだけ?そこはとっても、って言ってくれよ。」
「うーん、、少しだけですね。」
「おいおい、、。」
 俺たちは目を合わせて笑った
声をあげて。

出会ってから初めて、雨夜の笑い声を聞いた。
初めて聞く笑い声はとても明るい声だった。

思う存分笑い、
「で、なんの話だっけ?」
 と雨夜に問うた。
「更衣室にはロッカーがある、というところです。」
 雨夜が素早く答える。
こういうところ本当に大人だよな、、と感心しながら俺は続けた。

「仕事用の服を俺は置いてる。まぁ、、それだけじゃないけど。雨夜も少しは置いた方が便利だからいいと思う。、、あ!忘れるとこだった。」
 俺は大事なことを思い出した。
慌てて雨夜に伝える。
「仕事をする時、仮面を被るんだ。影さんはずっと被ってるけど。それロッカーに入れとくといいよ。」
「仮面って、どんな動物でもいいんですか?」
「もちろん。ちなみに俺、黒豹!」
 胸を張って答える。
まぁ、要さんが作ってくれたんだけど、と説明する。
「要さんが?すごいですね、、。あ、私狐がいいです。」
「可愛い!いいと思う。影にあとで報告しよう。」
「はい!」