夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

──俺にとって、、夜雨の笑顔が、、道しるべだ。

俺はこの日常が尊く幸せなことに改めて実感した。
嬉しくて思わず夜雨を抱きしめようとした瞬間、
「初稀!!」
 突然影が現れた。
「影!?」
 俺は夜雨から離れた。
「初稀!私は言いましたよね?夜雨を悲しませるようなことをすれば、復讐をすると!覚悟はできてるんでしょうね?」
「影!ちょ、ちょっと待って!今、謝って仲直りを!」
 慌てて言い訳をする。
「やっぱり、悲しませるようなことしたんですね?許しませんよ!」
「影さん!私はもう大丈夫です!しかも私も悪いんです!」
 俺たちの間に夜雨が入ってくる。
「夜雨が言うなら、、。次何かしたら、、分かってますね?」
「は、はい!」
 敬礼でもする勢いで返事をした。
「よろしい。、、ところで、初稀、あなたももう、えいれい社にいる必要はありませんよね?これからどうするんです?」
「っ!?、、はい。、、すみませんでした、、。」
「謝らなくていいですよ。今更。私だって復讐をするためにこの会社をひらいたんです。だから、もういいですよ。、、みんなが無事で帰ってきてくれたので、いいです。」
 心底ホッとしたような、柔らかな口調だった。
「まぁ、要さんから聞いていたので、、知ってはいたんですけど。」
「え?!父さんが?」
「えぇ。最初から。」
 さらっと告白する。
「マジかよ、、。父さんめ、、。」
 驚きの事実に俺は唸ることしかできない。

「影さん!」
 突然ハッとしたように雨夜が声を上げた。
「要さんの居場所、わかりますか?」
「父さんの、、?」
「うん。初稀くん、要さんに会って、自分の気持ち伝えて。もう会えないかもしれないんだよ?このままでいいの?家族でしょ?」
 夜雨が必死そうに言う。
「私が、、此処で死のうとした時、妹たちに助けられた。2人の、手の温もりで、自分を取り戻すことができたの。妹たちのおかげで、家族というあたたかみを、知った。初稀くんはやっと見つけた、お父さんっていう家族とまた離れ離れになっていいの?家族なんだから、、会いに行って一緒に帰ってきてよ。それに、要さんも、今まで1人で生きてきた。だから、、家族のあたたかさ、教えてあげて!」

──家族のあたたかさを知っている、夜雨だからこそ、俺に伝えようとしてくれているんだ。

「もちろん、私も、、」
 急に頬を赤らめ、下を向いた。
「え?」
「うんん、なんでもない。」
 夜雨が慌てたように首を振った。
「、、?そう?」
 俺もなんだか気恥ずかしくて頭を掻いていると影に背中をしばかれた。
「ってぇ!、、何するんすか?」
「乙女心がわかっていないからです。」
 怒ったようにツンとした声で続けた。
「影さん、初稀くんに、早く教えてあげてください!」
 夜雨が言う。
「あぁ、そうですね。、、ですが、たぶんもういない気がします。」
「「え!?」」
 俺と雨夜は声をあげる。
「辞表を出した時、もうこの街を去る、と彼は言っていたので、、。」
「そんな、、。」
 夜雨が悲しそうな声を出す。

「ですが、一つだけ、心当たりがあります。」
「あ!もしかして!」
 雨夜も心当たりがあるようで反応した。
「本当ですか?」
 思わず俺は前のめりになる。
影はある場所の名前を静かに言った。