夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

「クソッ!」

──先にやられた!俺たち以外にもいたんだ(、、、、、、、、、、、)。こいつを殺そうとしていた奴が。

「クッソ!」
 思わずもう一度叫び、滝宮の部屋から立ち去った。

「夏樹!晄玖!ごめん!、、っ!?」
 仲介屋のビルに駆け込んだ俺は息をのんだ。
2人はある男と対峙していた。
「初稀!無事でよかった、、。」
 安堵する2人に対し
「やっとお揃いですね、、。」
 と男は落ち着いた声でつぶやいた。
「さて、答え合わせをしましょうか。」
 微笑んで見せた。

「ふざけんな!俺はもうわかってんだよ!あんたのこと!」
「ほう、、。では、、」
「あんたは、滝宮に事故死を病死にされた女性の夫だろ?」
 俺は言葉を重ねるように叫んだ。
「案外調べていたんですね。あたりです。」
「、、心底あんたは嫌だぜ。いっつも俺に厳しいし、、復讐までも邪魔されんだからな!」
 俺は自分を落ち着かせるため一度深呼吸した。

「、、要さん。あんた、要さんだろ?」
 俺はゆっくりと男の名を呼んだ。
「、、よくわかったな。葉月、いや、初稀。」
 男、要の口調が変わった。そして声色も。

「あんた、、本当に何者だ?」
「俺の名前は笹原要(ささはらかなめ)。妻をあいつに病死にされた。彼女は体が弱く、入退院を繰り返していた。ある退院した日、彼女は暴走した車に撥ねられた。事故死のところを、滝宮が自分の地位を上げるために、、利用されたんだ。」
 悔しそうに唇を噛んだ。
「それで、、あんたも復讐のためにえいれい社に?」
「あぁ。俺はもう失うものがなかったからな。そんな時にえいれい社の存在を知った。まぁ、その時はえいれい社という名前ではなかったがな。」
「あと、いつもの要さんは変装だったんすか?あと、言葉遣い!キャラどんだけいるんすか?」
 俺はつい質問攻めにしてしまうが、
「どういう質問だよ、、。まぁ、さまざまなキャラを演じることができる。若い頃俳優の養成学校に通っていた時期があったからな。」
 呆れながらも正直に答えてくれた。
「えぇ!そうなんすか!」
「たとえば、、時間に厳しい短気な人物。丁寧で温厚なジェントルマン。、、滝宮に愛される男。」
 ニヤリと口角を上げながら言った。
「、、やっぱり。」

「あんたはそうやって滝宮に近づいた。俺たちのこと、わかってたんですか?」
 夏樹が訊いた。
「あぁ。一応な。」
「まさか、、。変装してたって言いましたよね?宮原巴瑠美も、、あいつは滝宮だったけれど、変装してたわよね?それって、、あんたが一枚噛んでた、ってことですか?」
 今まで何やら考えていた晄玖が口を開いた。
「まぁな。その頃から俺はもうあいつに近づいていた。あいつと一緒に住むようになって君たちが依頼したのをいい機会に復讐を実行した、という訳だ。君たちが依頼人だから、掟は破ってはいない。」

──宮原巴瑠美の時から、、。いや、俺がえいれい社に入った時から、俺はこの人の手の内で踊らされていたのか、、。

「密室にしてきただろうな?」
 突然かたい口調で訊いてくる。
「あ、あぁ、まあ。」
「ならよかった。あの家には俺の偽装したあいつの遺書が置いてある。、、お前はナイフで殺した後、出頭するつもりだったんだろ?」
「「え!?」」
 要の言葉に夏樹と晄玖が声を上げる。
「、、。」
 俺は黙って続きを聞く。
「だから、自殺に見せかけるため、毒殺にしたんだ。あいつは医者だし、毒はすぐに手に入る。宮原巴瑠美の時は身分を隠さなければならなかったから、毒は使えなかったが。」
 説明する要を見て、俺はふと疑問が湧いてきた。

──要さんって、、本当はどんな人なんだろう、、。

「あんたは、、本当はどんな人なんだ?一体、、」
 そう声をかけると、
「初稀!もう、、終わったことだ。俺のことは忘れろ。」
 鋭く、けれど、何故か優しくそう言った。
「じゃあな、初稀。もう会うことはないだろう。会社も辞めてきた。元気で、、、。」
 懐かしい眼差しで俺を見つめた後、要は部屋を出て行った。
「え?」

──あの、目は、、!?

慌てて追いかけて扉を開ける。

──あの目は!!

俺はこう叫んだ。

「父さん!!」
 と。

「父さん!父さんなんだろ?」
 道を歩く黒い影が歩くのをやめた。
だが、すぐに歩き始めた。
「待てよ!」
 声をかけると影は走り出す。
俺も慌てて追いかける。
「待ってくれ!」
 俺の声はむなしく彼は闇夜に紛れ、何処かへ消えていた。

「1人じゃねぇか、、。また、、。」
 俺は額の汗を拭い、空を見上げた。
空にはいつか雨夜が教えてくれた星が輝いていた。