「依頼人は、九条夏樹さん。父親を殺されたそうです。その犯人の女を殺したいとのご要望です。密室にして、自殺に見せかけたいと。葉月。雨夜が辞めた今、私も要さんも鈴さんも、手がいっぱいです。今回はあなた1人で仕事をしてもらうことになります。仲介屋さんにお手伝いは頼んではおきましたが、無理はしないようお願いします。」
　そう慌ただしく俺に影は依頼を伝えてきた。
「了解です。」
　俺は静かにそう言った。
「、、いってらっしゃい。」
　影は何か見透かすようにそう呟いた。
「！？、、いってきます。」
　戸惑いながら、返事した。

──すみません。影。

心の中で謝り、俺は依頼人の元へと向かった。

「ナツキ！」
　俺はナツキとミツキのいる仲介屋に向かった。
「やっと、、この時が来たな。」
　俺が着いた時にはもう、2人ともソファに座っていた。
「夏樹(なつき)、、。」
「あたしも一緒に。依頼人の名前は弟の名前だけど、あたしも依頼人の1人よ。」
「晄玖(みつき)、、。」
　俺は頷き、こう続ける。

「俺は、えいれい社の社員、葉月。本名は、、 塔矢初稀(とうやはつき)。計画は、事前に相談した通り。ターゲットは、滝宮凪。奴は一度このえいれい社を利用している。、、宮原巴瑠美として。その人物の復讐を、、今から行う。」

夏樹も晄玖も同時に頷いた。
「3年前、奴が目の前に現れた頃からチャンスを探ってきた。ついにこの日が来るんだな。」
　夏樹がつぶやく。
「あの時は、すぐ動けなくてごめん。雨夜の復讐をしようとしているって気づいて、、。」

──雨夜の目が、俺の復讐を決意した時の目と似ていたから、あの時は本当に勘だったけれど、、。

「いいんだ。」
「えぇ。無事、雨夜ちゃんも復讐を、、。」
「、、ありがとう。」
　俺は本心で礼を言った。
「だから俺たちも。」
　夏樹の言葉に晄玖と俺は黙って頷いた。

「あたしたちはずっと、あいつを追ってきた。今までの罪を告白する遺書を残して、、自殺に見せかけて殺して欲しい。」
「初稀の手は汚したくない。けど、、お前がそれを望むなら、せめてわからないようにして欲しい。」
　夏樹と晄玖が俺に向かって言う。
「、、わかりました。夏樹、晄玖、、復讐を一緒に決意してくれて、ありがとう。今まで本当にお世話になりました。」
　張り詰めた空気の中、俺は2人に頭を下げた。

──俺の、この手で、、俺たちの復讐を、終わらせる。

「いってきます。」
　2人に告げる。
「いってらっしゃい。」
　2人が答える。

俺は、あいつ、、滝宮凪の元へ向かった。