夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

「影!雨夜は?」
 復讐を終えた雨夜が心配になり、灯台へ向かうと影がいた。
「葉月!どうして此処へ?」
 驚いた様子でそう訊く。
「夜雨が心配で、、。今回の件、いつもより険しい顔をしていたし、様子がおかしかったので。連絡を取ろうとしても、取れなくなって。探していたんです。それで、夜雨は?」
 思わず前のめりになりながら俺は訊いた。
「もう大丈夫です。今、灯台の上で妹たちといますよ。」
「よかった、、。」
 影の言葉に大きく息を吐いた。

「ところで、、どうして雨夜の本名を知っているんです?」
 不思議そうに訊いた。
「え?!、、えっと、、訊いたので、、すみません、、。」
 顔が自然と熱くなるのがわかった。
と同時にその時の事を思い出す。

「葉月くん、私の本名わかる?」
 雨夜が唐突にそう切り出してきた。
「え?突然なんで?」
「いずれ、、本名で仕事をする日が来るから。知っておいて欲しくて。」
「んー?雨夜以外思いつかねぇ、、。」
 上を向きながら考える。
「ヒントは妹たちと似てる。」
「んー?るうとみう、だっけ?だから、、なんちゃらう?」
「あ、はい。」
 雨夜は少し呆れたように息を吐く。
なんちゃらうってなんですか?とぼやいている。
「ん?、、やう、ゆう、よう、らう、、あ!夜に雨で夜雨!」
 俺は指を鳴らしながら答えた。
「正解です。、、ていうか、あうから順番にやってたの?、、こういうところほんとに、、。」
「え?なに?」
「、、なんでもないです。、、はい、私の名前は、裏山夜雨。雨夜の名前の由来は、また考えてみてください。」
 フルネームを紙に書いてみせた。
「え〜教えてくれないの?」
「、、頑張って考えてください!」
 イタズラっ子っぽく意地悪く微笑んだ
「、、だから、ウラヤマです。とか仕事で使っても驚かないでくださいね。」
「わかった。なぁ、、2人の時、夜雨って呼んでいい?」
「え?、、いいけど、、。」
 大きく目を開き戸惑い気味に頷いた。
「じゃ、夜雨。改めて、俺の名前は──── 。」

 あの時から、俺は自分の気持ちに気がついた。
今、一刻も早く、夜雨に会いたいと思うのは、、。
「葉月、夜雨とはどうなんですか?」
 突然影に尋ねられる。
「え?!えーっと、、まだ、、です。」
 影にバレた!?と戸惑いながら答える。
「しっかりしなさい。すぐ人に取られちゃいますよ。あと、、夜雨のこと、悲しませるようなことをしたら私が復讐しますから。」
「は、はい!」
 敬礼でもするような勢いで返事をした。
「よろしい。」
穏やかな口調で満足そうに頷きながら影が言った。

──けど、この後、夜雨を悲しませてしまうとは、思いもよらなかった。