夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

 そして、計画が実行される日になった。
「準備はいいですか?」
 落ち着いた様子で影が訊いた。
「「はい。」」
 俺たちは頷く。
「2人とも、、頼みましたよ。行ってらっしゃい。」
「「行ってきます!」」
 このセリフは俺たちがいつも交わしている。
影の行ってらっしゃいに答えた俺たちは絶対に帰ってくる、いや帰ってこなければならない。
そういう意味を持つ。
これで帰ってこなかったら影に大目玉を喰らう。

 俺たちは無言でえいれい社を出て、デパートに向かった。
デパートの中では健次郎とその家族がショッピングを楽しんでいる。
だが、事前に渡した薬品を咲希が健次郎に飲ませているため、楽しいショッピングは、、もう少しで終わるだろう。

──来た、、。坂本健次郎、、。

咲希の隣を歩いている男が坂本健次郎だ。
と、突然、健次郎が倒れた。

──薬が効き始めた、、。

健次郎の弟らしき人物が胸骨圧迫を開始した。
咲希からの情報で弟は医学に精通しているとか。

「すみません。そこの黒い服のおにいさん。AED取ってきてくれません?」
「あ、え?俺?」
 思わず声を上げる。
「お願いします!」

──まさか、俺にAEDをお願いしてくるとは、、。まぁ、健次郎を今此処で死なせる訳にはいかねぇからな

 俺は走り出した。

 AEDを取りに行き、帰ってくると、雨夜は電話をお願いされたようだった。
「ヨウ!、、大丈夫か?」
 思わず俺は声をかける。
「うん、、。」
「大丈夫だから。」
 演技反面、本心でそう言った。

 しばらくして、救急車が到着した。
健次郎は運ばれて、姉が付き添いで救急車に乗った。
「ありがとうございました。人様に電話をかけさせるなんて、本当にすみません。申し訳ない。」
 弟に頭を下げられた。
「いえ、、。気にしないでください。」
 俺はそう言った。
「すみません。本当にありがとう。」
 何度も頭を下げる弟に
「お礼なんて、やめてください。」
 雨夜が鋭く言った。

──確かに、、俺らに礼を言われる筋合いはない。

「早く、お兄さんのそばに行ってあげた方がいいんじゃないですか?」
 俺はそう訊く。
「本当にありがとう。」
 またもや俺たちに頭を下げたあと、咲希と息子を連れ立って病院へ向かった。

雨夜は彼らに鋭く冷たい視線を向けた。

──やっぱり、、。雨夜の復讐相手は、、。