夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

「改めて、、雨夜は葉月と組んでもらいます。」
 影が気を取り直したように明るく努めた声で言った。

「へ?俺?」
 また思わず声を上げた。

仕事の時、大抵2人で組んで仕事を行う。
いつも、俺は要と組んでいた。
だから、此処は鈴と雨夜が組むものかと思い込んでいた。
別に雨夜が嫌なわけはない。
断じてない。
むしろ要とおさらばで万々歳だ。
けど、俺が先輩としてリードできるか不安だった。

そんな俺の心情を察してか、
「やったわね、葉月。要っちとおさらばよ。大丈夫、葉月は四捨五入したら大人なんだから。できるわよ。」
 と鈴が声をかけてきた。
そして鈴は右手を突き出して見せた。
「なんだと?」
 要が鈴に訊き返した。
「なんでもないです。要っち。」
 鈴は要のことを『要っち』と呼ぶ。
 要はフンッと息を吐き、机へ向いた。
「じゃあ、葉月、雨夜に色々教えてあげてください。」
 と影が葉月に柔らかな声で言った。
「は、はい!」
 咄嗟に大きく返事する。
「よろしくお願いします。葉月さん。」
 雨夜は俺に向かって頭を下げた。

──何者なんだろう、、。この雨夜と言う少女は。

「なーに突っ立ってんの!案内してあげなさい!」
 ずっと沈黙していた俺に鈴が横から平手と共に声をかけられた。
「ってぇ!」
 思わず悲鳴を上げた。
「な〜に見惚れちゃってんの〜?もう!」
 俺にそう耳打ちしてきた。
「見惚れてねぇっす、、。」
 小声で言い返す。
「どうかしらね?」
 鼻歌をしそうなくらい楽しそうな表情だ。

俺は言い訳がする気が起きなかったので、雨夜の方へ目を向けた。
「俺、葉月、よろしく。あ、あの時、ごめんな。」
「よろしくお願いします。いえ、気にしないでください。あんなところに突っ立ってた私の方が、、」
 と、雨夜が言い終わらないうちに
「え!?なぁになぁに?知り合いだったの?」
 と鈴が興奮したように声をかける。
「そこで会ったんです。じゃ、鈴さん、雨夜に案内してくるんで、、この会社案内しながら重要事項とか説明するな。」
 鈴との話を早々に切り上げ、雨夜に優しく声をかけた。
「はい、よろしくお願いします。」
 律儀に頭を下げた。