夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

「あの、、。」
 手術が終わり、廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「どうして、、。あいつは、、。死ななければならなかったんですか?」
 弱々しく問う声に少なからず恐怖を覚えた。
が、穏やかな口調で
「なんのことでしょう?」
 と聞き返した。
「あなたは、この病院の医者ですよね?なら、先ほど搬送された僕の友人は知ってますよね?首を吊っているのを僕が発見したんです。そして、救急車を呼びました。テンパってしまって、、伝えなければいけないことを伝えることができなかったくらい。ですが救急隊は迅速に処置をし、此処へ運んでくれました。でも、、彼は死んだ。どうしてですか?」
 青い顔で男は私に問いかけた。
身元不明で運ばれた男と同じくらい若い男だった。
「最善を尽くしましたが、もう手遅れでした。」
「、、もう手遅れ?、、違いますよね?運ばれてすぐ、諦めたんですね?」
「それは、、どう言う?」
「手術していたのは、彼の後に搬送された人物だ。深夜で人が少ない中、大きな手術を選んだ。俺の友人の命ではなく、何処かの御曹司の命を、、選んだ。、、医者なら、どちらも助けるべきなのでは?」
 思ったよりも冷静な声に、身震いをする。
「それは、、もう手遅れだと」
「俺が彼を助けた時!、、まだ彼は、温かかった。」
 私の言葉を遮り、涙を流しながら訴えた。
「確かに、、彼はいけないことを、、した。それを償って、反省して、、。前を向こうと、、してきた、、。なのに、、。生きようとしたのに、、。なんで?なんでだよ、、。」
 しゃがみ込み頭を抱える男に私は言う。
「罪人を、生かしておかなくてよかった。それに彼は自ら命を絶った。本人は死を望んでいたんでしょう。なら、、よかったじゃないですか?」
「何だと?」
「だから、罪人を助ける義務はない。と言ってるんです。」
 もう一度そう言った。
「やっぱり、、あんたが殺したんだ。お前が、、あいつを、、殺した。助かるはずのあいつを、、見捨てた!俺はお前を許さねぇ、、。」
 男は私に冷酷な目を向けた。

「あんたを地獄に叩き落とす。」
 そう呟いたのは、私は聞こえていなかった。

──私の判断は、、間違っていない。そうだ、、。間違っていない。

『お前が、、殺した。』