夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

「滝宮先生!此処にも腫瘍が!」
 慌てた声で私を呼ぶのは、向かいに立っている同じ医師、南川(みなみかわ)
「見えている!」
 思わず言い返す。

──大きな腫瘍だ。どうして、こんなところに。せめて、もう少し早く見つかっていれば。

いや、違う。このミスは、、。


この患者の検査を行った際、放射線技師の九条(くじょう)が、
「わずかですが、此処にも腫瘍のある可能性があります。さらに詳しく検査をすることを提案します。」
 そう提言してきた。
「その保証は?」
「どういう意味でしょう?」
 私の言葉に困惑を隠せていない。
「だから、私は、その腫瘍が本当にある保証はあるのか、と訊いているのだ。もし、なかった場合、どうする。今わかっている腫瘍はとても大きい。もう手術を先延ばしには出来ない。」
「では、僕の言うとおり、腫瘍があった場合、何もしないままでは手術の日までに大きくなっている可能性があります。切ってからでは遅くなります。」
 突き放したのに言い返してきた。
「今わかっている腫瘍を取り除く方が先だ。」
 私は話は終わりだという風に言い放った。

──この患者の手術が終わった後、大手自動車メーカーの社長が手術予定。この病院のために手術は早々に終わらせて、空けなければならない。社長の命の方が、、。


──あの時の、腫瘍が、、こんなに大きくなっているなんて。

このミスは、、。

それからのことは覚えていない。
手術は失敗した。
患者も死んだ。

『お前のミスだ、、。』

──違う、、。

『判断を間違えた。』

──違う、、。

頭に悪魔の囁きが聞こえる。

『お前が、、殺した(、、、)

「違う!!」
 必死に頭を振り、考えを飛ばす。

──違う、、。私じゃ、、ない。認めるものか、、。