俺の母さんはヴァイオリン奏者で、子供達にヴァイオリンを教える先生でもあった。
俺は小さい頃からヴァイオリンの音色を聴いていた。
ずっと聴いているうちに、いつのまにかその音色が好きになり、ヴァイオリンを手に取っていた。
俺には歳の離れた兄貴がいて、兄貴もヴァイオリンが好きだった。
自分では演奏しないが、毎日ヴァイオリンの曲を聴いているような人だった。
と言っても、事情により離れて暮らしていたから、本当かは知らない。
でも、俺にはわかる。
兄貴は本当にヴァイオリンが大好きなことが。
俺にこうリクエストしてきたから。
「讃美歌弾いてよ。俺に。」
「讃美歌?」
「そう、俺大好きなんだ。特に、320番、主よ御許に近づかん、がさ。このカセットで毎日聴いてるんだ。」
そう言うと、カセットを再生してくれた。
柔らかなヴァイオリンの音が流れてきた。
「これ、、母さんの音がする。」
毎日聴いている母さんのヴァイオリンの音だと気づいた。
「お!よくわかったな。お前が生まれる前、母さんが弾いてくれたのを録音してたんだ。今、離れて暮らしてるだろ?だから、、毎日聴けねぇじゃん?だから、、カセットで聴いてんの。今度はお前に弾いて欲しいんだ。」
ありったけの笑顔で兄貴は頼んできた。
こんなお願い、断る理由はなかった。
速攻で何度も頷いた。
それからしばらくしてヴァイオリンの演奏会が開かれることが決まった。
今まで演奏会には出たことがなかったけれどこの機会に出ることにした。
俺はそこで、讃美歌320番を演奏することにした。
たまに演奏会まで兄貴と会う機会はあったけど、初めての演奏会で、俺の讃美歌を聴いて欲しかったから聴いてもらっていなかった。
俺が、絶対演奏会で聴いて欲しい!兄貴のために弾くから!絶対に見に来て!そうお願いしたから。
でも、、俺の初の演奏を、兄貴は聴きに来なかった。
てっきり俺の演奏を聴いていると思っていたのに、俺を待っていたのは、放心状態の母さんだった。
そして、今お父さんが、来てこう伝えに来たの。って呟いた。
「お兄ちゃんが、死んだって。」
俺はさっぱりわからなかった。
は?兄貴が、、死んだ?嘘だろ?そんなわけない。何 かの間違い。だって、、あんな元気だったじゃん?俺は信じねぇ!なんで?なんで、兄貴、俺の演奏聴きにこなかったの?初の、、演奏だったのに?で、でも、兄貴のことだから、俺の演奏聴いてて、よかったぞって、褒めて、頭撫でてくれるよな?、、死んでなんか、、ないよな?
いろんなことが頭に浮かんだ。
でも、母さんの放心した姿。
「もう、、あの子は死んだの」という母さんの一言。
それで俺は本当に兄貴が死んだんだって思った。
後から話を聞くと、兄貴は自殺したらしい。
なんで自殺したのか、、わからないけど、後悔してる。
なんで、演奏会の時に、ってわけのわからない意地張って、兄貴に演奏聴かせなかったんだろう。なんで兄貴のために演奏しなかったんだろうって。
だから、天の兄貴に届けるために、この曲をヴァイオリンで弾き続けることを決めた。
届かなかったとしても、兄貴のために祈りの気持ちをのせて演奏することを。
それと同時に俺は演奏会にはもう出ねぇって決めた。
自慢じゃねぇけど、あの演奏会の後、オファーが来た。プロになるためにうちに来ないかって、ある会社から。
でも、あの演奏は、最初で最後の、兄貴に向けての演奏会。
兄貴のための、初めてで、、最後の演奏会なんだ。
だから、、もう、弾かない。というか、弾けない。
兄貴のために頑張れたんだ。その兄貴がいないところで上手く弾けねぇよ。
プロになることも諦めた。
ただ、祈るためにヴァイオリンを弾くことを決めた。
さらに、その数年後、母さんも死んだ。
病気が見つかり、呆気なく。
母さんが死ぬ時、
「お兄ちゃんの分まで、あなたが生きて、、そしてヴァイオリンを弾いて。私の分まで祈り続けてね。」
と言って母さんのヴァイオリンを渡された。
そして今、母さんと兄貴、この2人を祈るために、ヴァイオリンを弾いている。
毎日、毎日、このランタンの光の元、天に向かって。
俺は小さい頃からヴァイオリンの音色を聴いていた。
ずっと聴いているうちに、いつのまにかその音色が好きになり、ヴァイオリンを手に取っていた。
俺には歳の離れた兄貴がいて、兄貴もヴァイオリンが好きだった。
自分では演奏しないが、毎日ヴァイオリンの曲を聴いているような人だった。
と言っても、事情により離れて暮らしていたから、本当かは知らない。
でも、俺にはわかる。
兄貴は本当にヴァイオリンが大好きなことが。
俺にこうリクエストしてきたから。
「讃美歌弾いてよ。俺に。」
「讃美歌?」
「そう、俺大好きなんだ。特に、320番、主よ御許に近づかん、がさ。このカセットで毎日聴いてるんだ。」
そう言うと、カセットを再生してくれた。
柔らかなヴァイオリンの音が流れてきた。
「これ、、母さんの音がする。」
毎日聴いている母さんのヴァイオリンの音だと気づいた。
「お!よくわかったな。お前が生まれる前、母さんが弾いてくれたのを録音してたんだ。今、離れて暮らしてるだろ?だから、、毎日聴けねぇじゃん?だから、、カセットで聴いてんの。今度はお前に弾いて欲しいんだ。」
ありったけの笑顔で兄貴は頼んできた。
こんなお願い、断る理由はなかった。
速攻で何度も頷いた。
それからしばらくしてヴァイオリンの演奏会が開かれることが決まった。
今まで演奏会には出たことがなかったけれどこの機会に出ることにした。
俺はそこで、讃美歌320番を演奏することにした。
たまに演奏会まで兄貴と会う機会はあったけど、初めての演奏会で、俺の讃美歌を聴いて欲しかったから聴いてもらっていなかった。
俺が、絶対演奏会で聴いて欲しい!兄貴のために弾くから!絶対に見に来て!そうお願いしたから。
でも、、俺の初の演奏を、兄貴は聴きに来なかった。
てっきり俺の演奏を聴いていると思っていたのに、俺を待っていたのは、放心状態の母さんだった。
そして、今お父さんが、来てこう伝えに来たの。って呟いた。
「お兄ちゃんが、死んだって。」
俺はさっぱりわからなかった。
は?兄貴が、、死んだ?嘘だろ?そんなわけない。何 かの間違い。だって、、あんな元気だったじゃん?俺は信じねぇ!なんで?なんで、兄貴、俺の演奏聴きにこなかったの?初の、、演奏だったのに?で、でも、兄貴のことだから、俺の演奏聴いてて、よかったぞって、褒めて、頭撫でてくれるよな?、、死んでなんか、、ないよな?
いろんなことが頭に浮かんだ。
でも、母さんの放心した姿。
「もう、、あの子は死んだの」という母さんの一言。
それで俺は本当に兄貴が死んだんだって思った。
後から話を聞くと、兄貴は自殺したらしい。
なんで自殺したのか、、わからないけど、後悔してる。
なんで、演奏会の時に、ってわけのわからない意地張って、兄貴に演奏聴かせなかったんだろう。なんで兄貴のために演奏しなかったんだろうって。
だから、天の兄貴に届けるために、この曲をヴァイオリンで弾き続けることを決めた。
届かなかったとしても、兄貴のために祈りの気持ちをのせて演奏することを。
それと同時に俺は演奏会にはもう出ねぇって決めた。
自慢じゃねぇけど、あの演奏会の後、オファーが来た。プロになるためにうちに来ないかって、ある会社から。
でも、あの演奏は、最初で最後の、兄貴に向けての演奏会。
兄貴のための、初めてで、、最後の演奏会なんだ。
だから、、もう、弾かない。というか、弾けない。
兄貴のために頑張れたんだ。その兄貴がいないところで上手く弾けねぇよ。
プロになることも諦めた。
ただ、祈るためにヴァイオリンを弾くことを決めた。
さらに、その数年後、母さんも死んだ。
病気が見つかり、呆気なく。
母さんが死ぬ時、
「お兄ちゃんの分まで、あなたが生きて、、そしてヴァイオリンを弾いて。私の分まで祈り続けてね。」
と言って母さんのヴァイオリンを渡された。
そして今、母さんと兄貴、この2人を祈るために、ヴァイオリンを弾いている。
毎日、毎日、このランタンの光の元、天に向かって。



