夜明けを示す北極星〔みちしるべ〕

 俺たちも会社に戻ることにした。
外に出るともう外は真っ暗になっていた。

「葉月さん?」
 戸惑ったような顔で俺を呼んだ。
「え?」
「、、どうしたんですか?さっきから様子が変ですよ?」
「、、。」
 俺は思わず黙ってしまう。
「もしかして、、暗いの、、嫌いですか?」
 ひょっとして、というように雨夜が訊く。
「苦手、、ではある。」
 素直に頷き認める。
実は、俺は暗闇が苦手なのだ。
何故かわからないけど暗闇が、、とっても怖く感じる。

──あいつが関わってるかもっていう不安とこの暗さ、、そりゃ顔に出るよな、、。そういえば要さんにも、鈴さんにもバレたよなぁ。

昔のことを思い出しながら頭を掻く。
街灯が少ない道を懸命に足を動かして歩いてたんだけどな、と苦笑を浮かべた。
「なんでかわかんねぇけど、、怖いんだ。でも嫌いではねぇんだ、、だってよく1人で、、。いや、なんでもねぇ、、。」
 不意に恥ずかしくなり髪の毛を掻きながら横を向く。
「実は、、私も暗いの苦手です。何も見えなくて、何もわからなくて、怖くなるから、、。」
「え?」
 思わぬ雨夜の言葉に俺は戸惑う。
「でも、上見てください。」
 唐突に明るい声で指をさした。

──上?上に何があるんだ?

 俺は恐る恐る上を向いた。

「星、、綺麗ですよね、、。」
「あぁ、、。綺麗、、だな。」
 俺はその声しか出すことが出来なかった。
俺の頭上では、星が輝いていた。
「周りが暗いお陰で、あの星の光は、私たちのもとに届くんです。あんなに輝いて見えるんです。暗くても、、星が空で輝いてます。光があります。だから、、大丈夫です。」
 俺に語りかけていながら、雨夜は自分自身にも訴えているような気がした。
「そうだな、、。」
「少し、楽になりました?」
 得意そうに訊いてくる。

「、、うーん、ちょっどだけ、かな?」
 いつぞやの仕返し、とばかりに言ってのける。
「そこは、とっても楽になりました、って言うところです!」
 怒ったように雨夜が言う。
そして、俺たちは目を合わせて、同じタイミングで吹き出した。
思いっきり笑った後、
「ありがと。」
 雨夜に呟いた。
少し照れたように、雨夜は微笑んでいた。