いとまじ、いとまじ

 《月比丘の儀》が失敗して吉田大岐が生き残ったのは、月夜巳様の御告げだ。婆ではもう持たん。お前が継げと仰っている。やはり間違っていなかった。僕の使命は、この世に生を受けた瞬間から定められていた。

 僕の生まれ年、月夜巳様がはじめて肉体を手放した、記念すべき“乙巳”の年……

 吉田の死刑執行が合図。《いとまじ》を唱えよ。贄を揃え、我が手で残った月夜巳様の身体を火をもって滅する。さすればその血肉は天に昇り、土地の呪縛から放たれる。やがて日本全土を覆い、万人を呑み込むだろう。

 【来たる“乙巳”二〇二五年 必ずや《いとまじ》は成就せん】

 なんと有難いことか。月夜巳様、大いなる御慈悲に感謝します。
 いとまじ、いとまじ