チャラッ、チャララーンの音楽が流れるコンコース内を歩いていると、慌ただしい足音が階段の方から聞こえてきた。
僕と翔は顔を見合わせ、そこへ向かった。
「わっ」
ちょうど鉢合わせして、僕らは揃って後ずさった。
「あっ」
浮かれたような声が出た。こんな時に相応しくない。けれど僕の脳は、桐難学園の学ランを見ると嬉しくなるようにできていた。
「桐難学園……」
翔がぽつりと言った。合格間違いなしと言われていても、桐難学園は翔にとっても憧れだ。
「えっ……西中の学生?」
桐難の学生が言った。柔和な雰囲気をまとった、目元の優しい青年だ。学ラン越しからも体格の良さが伺える。髪は野球部なら長く、一般学生なら短い。そこに装着された銀色の枠の中には『ハズレ』のカードがある。
「父……」
桐難の学生の視線は僕の頭上に釘付けされた。
「父さんも……これに参加してるのか……?」
眉間にシワを寄せ、考え込むのを、僕と翔は黙って見守った。
「きみたちは、誰かに会った?」
「俺は女の人に。二十代くらいの、黒髪の人でした」
翔が簡潔に答えた。
「僕は男の人に……えっと、大柄の、坊主の人でした」
言うと、桐難の学生は小さく頷いた。
「あなたは?」
翔が問う。
「ひょろっとした男に会った。このカードは彼から奪ったものだ」
僕はもう一度、彼の頭上に目をやった。
「きみたちも二枚ずつ?」
「俺は一枚。こっちのアキラは三枚です」
「アキラ?」
彼の目がギロッと鋭くなった。
「は、初めまして……伊藤アキラです」
ギロッと鋭くなった目が、今度は大きく見開かれた。
「あ、あの……?」
「俺は、伊藤千佳だ」
まるで、親の仇に対して積年の恨みをぶつけるように。その名を告げられた瞬間、僕は過去の罪を思い出して『あの時の!』となるべきのような。
「よろしくな」
けれど千佳は、スっと元の穏やかな表情に切り替えた。僕の見間違いで済ませられるような絶妙な速さで。
「きみは?」
「野崎翔です」
「よろしく」
翔はペコリと頭を下げた。
「じゃあ翔くん、俺とじゃんけんしよう」
僕の心臓は変な心地に騒いでいた。千佳の優しげな目元が、残像で鋭く見える。
「俺はグーを出すから、きみはパーで勝ってくれ」
千佳はグーの構えを取った。
「千佳さん」
翔は背の高い千佳を見上げ、言った。千佳の眉がピクリと反応する。
「俺は桐難学園を受験するんです。千佳さんは、どうやって桐難に?」
「野球推薦だよ」
全身の細胞がワッと高鳴った。
千佳は桐難学園野球部。髪が少し長いのは引退した三年生だからか。でも今年の甲子園に伊藤千佳の名前はなかったような。
「パーを出せばいいんですね?」
翔はグーの構えを取った。野球推薦で入学した千佳に、これ以上聞くことはないと言う風に。「そうなんですね」の一言もなく。
僕はチラと千佳を見た。桐難野球部と言えば、総勢100人以上のマンモス部。上下関係が厳しく、密かにいじめも囁かれている。翔のあるまじき態度を、けれど千佳は柔和な笑顔で受け止めた。
「ああ」
「じゃあ、じゃん、けん」
「ぽん」
同時に出された手。チョキとグーに、僕は混乱した。
「なっ……」
グーを出すと言った千佳はチョキを、
パーを出すと言った翔はグーを出している。
動揺する僕の隣で、翔は冷静な表情で千佳のグーを見下ろしている。
ブン、凍りついた空気が、翔の装置から放たれた音で緩む。僕と千佳は同時に翔の頭上を見やった。
「何だった?」
翔に問われて、僕は「『次女』」と答えた。
千佳の口が、小さく動いた。聞き取れなかったけれど、『次女』ではなかった。
「行こう、アキラ」
翔は僕の腕をグイと引っ張った。さっさと階段を上っていく。
「おいっ、待てよっ」
慌てて千佳が駆けつける。翔は止まらない。二階のコンコースに入って、周囲を見回しつつ先を進む。
「待てって!他に誰もいないんだ!一緒にいた方がいい!」
「アンタは信用できない。アンタに言われた通りにパーを出していたら、俺は死んでいた」
「きみだってグーを出したっ!それと同じだろっ!」
長い手が伸びて、翔の肩を掴んだ。翔は抵抗せずに立ち止まる。フライドポテト屋の前だ。
「俺がグーを出してもアイコだ。俺を負かそうとしていたアンタとは罪の重さが違う」
翔は振り返った。僕も釣られて振り返る。翔は鋭く千佳を睨んだ後、鼻で笑った。
「それに、ハズレしか持ってないアンタに用はない」
千佳の額に亀裂のようなシワが刻まれた。憤怒するその上には『ハズレ』のカード。
「……きみには、『次女』が必要なのか?」
千佳の額に刻まれたシワが、怒りではなく悲痛なものに変わる。
「俺には『次女』が必要なんだ……妹がいる」
「そんなの知るか」
翔は向き直り、「行こう」僕の手を取って再び歩き出した。立ち止まる気のない、引き離すことを意識した足取りで。
僕も翔も、弟が一人いるだけで妹はいない。
「翔っ……『次女』なら、あげても良いんじゃない?」
「カードにはハズレがある。『次女』でも、これはアタリなんだよ。アタリを無条件で手放したくない」
「でもっ」
僕はチラと背後を見た。千佳はその場に立ち尽くしたまま。じきにカーブで見えなくなる。
「必要としてる人がいるのに……」
「アキラだって見たろう。アイツは俺を殺そうとした」
「そうだけど……っ」
千佳が見えなくなるギリギリで、僕は足を止めた。翔も立ち止まる。
「もう、同じことはしないだろうし……」
僕が言うと、翔は僕の両肩を掴んで、「アキラ」説得するように言った。
「全員分のカードがあるとは限らない。『父』や『次女』があるってことは、母さんや弟たちもこれに参加してるってことだ。アタリのカードは、『次男』と交換するのに使える」
「『次男』を持ってる奴がいないとしたら?」
千佳の声に振り返る。千佳は歩きながら、
「『次男』が用意されていないとしたら?」
翔の顔にザッと影が落ちた。
「用意されてない……?」
翔は千佳の言葉を咀嚼するように、唇に指を当てた。「そんなわけない」と一蹴することなく、その可能性を思惟している。
「用意されていたとしても、一枚しかない場合はどうする?『父』も『母』も、全て一枚ずつしかない場合は……」
千佳は足を止め、ポケットに手を伸ばした。
「……っ」
翔は速かった。千佳がポケットから鋭利な先端を向けるのとほとんど同時に、翔も同じものを向けたのだ。持ち手が木製の、先だけ鋭利に尖ったアイスピック。
千佳とはクレープ屋分の距離がある。ショーケースに並んだクレープ、ポップなメニュー版。そしてゲーム開始からエンドレスで流れる軽快な音楽。多すぎる情報に目が回りそうだ。
「こんなものまで用意されてるんだ。種別カードは一枚ずつ。最後は『殺し合え』ってことだと思わないか?」
千佳は片頬で笑った。もう片方は見事なまでに無表情。
「なおさら、アンタとは行動できないな」
「俺は二人きりで行動する方がよっぽど危険だと思うけど」
千佳はアイスピックをポケットに収め、翔に歩んだ。
「二人の場合は相手に裏切られたら終わり。裏切ったもん勝ちだ」
千佳が僕を見て、翔も横目で僕を見た。
「ぼ、僕は裏切らないっ」
「……わかってる」
でもその声には、薄らと不安が混じっていた。
「ごめん……でも、俺たち『長男』じゃないか」
翔は視線を落として言った。苦しげな声に、反論する気が削ぎ落とされる。
反論? 僕だって最初、翔を疑ったじゃないか。
「俺も長男だ」
千佳は翔の前で足を止めると、アイスピックの先端に自ら額を差し出すように、頭を下げた。
「さっきは悪かった。カードが人数分あると思えなくて、プレイヤーを減らそうと思ったんだ。許してくれとは言わない。ただ、俺には妹がいる。どうしても『次女』が欲しい。他はいらないから、どうか『次女』だけ譲って欲しい」
翔の構えるアイスピックが、千佳の額の下で震えた。
「『長男』は、いらないと?」
「ああ」
「『父』も、『母』も?」
翔が問うと、千佳は一呼吸おいて、顔を上げた。
「いらない。どっちも壊れてしまったから」
淀んだ瞳に、僕は思わず息を飲んだ。驚く僕らを見て、千佳は満足げに、それでいて自嘲気味に笑った。
「心底死んでくれたらって思うよ」
「おにいっ!」
千佳の背後に、僕らと同じ中学の制服を着た少女が現れた。千佳はその声にハッと振り返るなり、駆け寄った。
遠目でも少女を強く抱きしめていることがわかる。僕は二人の再会に焦った。ここには家族がいる。一刻も早く、僕の家族を探さなければ。
翔が歩き出した。進行方向とは逆の、開け放たれたゲートへと。
「翔っ」
僕は翔を追いかけて、ゲートから客席に入った。広々としたスタジアムを見回す。
「アキラ、さっきから流れてるこの音楽……」
翔は階段を下りながら、
「聞いたことあるか?」
「えっ……う、うん」
キャッチーなメロディ。日本のロックバンドの曲で、連ドラの主題歌にもなった。
「俺は知らない」
翔は区切りのいい地点で足を止め、振り返った。
「俺はこんな曲、聞いたことない」
らしくない、困惑したような表情で。
僕と翔は顔を見合わせ、そこへ向かった。
「わっ」
ちょうど鉢合わせして、僕らは揃って後ずさった。
「あっ」
浮かれたような声が出た。こんな時に相応しくない。けれど僕の脳は、桐難学園の学ランを見ると嬉しくなるようにできていた。
「桐難学園……」
翔がぽつりと言った。合格間違いなしと言われていても、桐難学園は翔にとっても憧れだ。
「えっ……西中の学生?」
桐難の学生が言った。柔和な雰囲気をまとった、目元の優しい青年だ。学ラン越しからも体格の良さが伺える。髪は野球部なら長く、一般学生なら短い。そこに装着された銀色の枠の中には『ハズレ』のカードがある。
「父……」
桐難の学生の視線は僕の頭上に釘付けされた。
「父さんも……これに参加してるのか……?」
眉間にシワを寄せ、考え込むのを、僕と翔は黙って見守った。
「きみたちは、誰かに会った?」
「俺は女の人に。二十代くらいの、黒髪の人でした」
翔が簡潔に答えた。
「僕は男の人に……えっと、大柄の、坊主の人でした」
言うと、桐難の学生は小さく頷いた。
「あなたは?」
翔が問う。
「ひょろっとした男に会った。このカードは彼から奪ったものだ」
僕はもう一度、彼の頭上に目をやった。
「きみたちも二枚ずつ?」
「俺は一枚。こっちのアキラは三枚です」
「アキラ?」
彼の目がギロッと鋭くなった。
「は、初めまして……伊藤アキラです」
ギロッと鋭くなった目が、今度は大きく見開かれた。
「あ、あの……?」
「俺は、伊藤千佳だ」
まるで、親の仇に対して積年の恨みをぶつけるように。その名を告げられた瞬間、僕は過去の罪を思い出して『あの時の!』となるべきのような。
「よろしくな」
けれど千佳は、スっと元の穏やかな表情に切り替えた。僕の見間違いで済ませられるような絶妙な速さで。
「きみは?」
「野崎翔です」
「よろしく」
翔はペコリと頭を下げた。
「じゃあ翔くん、俺とじゃんけんしよう」
僕の心臓は変な心地に騒いでいた。千佳の優しげな目元が、残像で鋭く見える。
「俺はグーを出すから、きみはパーで勝ってくれ」
千佳はグーの構えを取った。
「千佳さん」
翔は背の高い千佳を見上げ、言った。千佳の眉がピクリと反応する。
「俺は桐難学園を受験するんです。千佳さんは、どうやって桐難に?」
「野球推薦だよ」
全身の細胞がワッと高鳴った。
千佳は桐難学園野球部。髪が少し長いのは引退した三年生だからか。でも今年の甲子園に伊藤千佳の名前はなかったような。
「パーを出せばいいんですね?」
翔はグーの構えを取った。野球推薦で入学した千佳に、これ以上聞くことはないと言う風に。「そうなんですね」の一言もなく。
僕はチラと千佳を見た。桐難野球部と言えば、総勢100人以上のマンモス部。上下関係が厳しく、密かにいじめも囁かれている。翔のあるまじき態度を、けれど千佳は柔和な笑顔で受け止めた。
「ああ」
「じゃあ、じゃん、けん」
「ぽん」
同時に出された手。チョキとグーに、僕は混乱した。
「なっ……」
グーを出すと言った千佳はチョキを、
パーを出すと言った翔はグーを出している。
動揺する僕の隣で、翔は冷静な表情で千佳のグーを見下ろしている。
ブン、凍りついた空気が、翔の装置から放たれた音で緩む。僕と千佳は同時に翔の頭上を見やった。
「何だった?」
翔に問われて、僕は「『次女』」と答えた。
千佳の口が、小さく動いた。聞き取れなかったけれど、『次女』ではなかった。
「行こう、アキラ」
翔は僕の腕をグイと引っ張った。さっさと階段を上っていく。
「おいっ、待てよっ」
慌てて千佳が駆けつける。翔は止まらない。二階のコンコースに入って、周囲を見回しつつ先を進む。
「待てって!他に誰もいないんだ!一緒にいた方がいい!」
「アンタは信用できない。アンタに言われた通りにパーを出していたら、俺は死んでいた」
「きみだってグーを出したっ!それと同じだろっ!」
長い手が伸びて、翔の肩を掴んだ。翔は抵抗せずに立ち止まる。フライドポテト屋の前だ。
「俺がグーを出してもアイコだ。俺を負かそうとしていたアンタとは罪の重さが違う」
翔は振り返った。僕も釣られて振り返る。翔は鋭く千佳を睨んだ後、鼻で笑った。
「それに、ハズレしか持ってないアンタに用はない」
千佳の額に亀裂のようなシワが刻まれた。憤怒するその上には『ハズレ』のカード。
「……きみには、『次女』が必要なのか?」
千佳の額に刻まれたシワが、怒りではなく悲痛なものに変わる。
「俺には『次女』が必要なんだ……妹がいる」
「そんなの知るか」
翔は向き直り、「行こう」僕の手を取って再び歩き出した。立ち止まる気のない、引き離すことを意識した足取りで。
僕も翔も、弟が一人いるだけで妹はいない。
「翔っ……『次女』なら、あげても良いんじゃない?」
「カードにはハズレがある。『次女』でも、これはアタリなんだよ。アタリを無条件で手放したくない」
「でもっ」
僕はチラと背後を見た。千佳はその場に立ち尽くしたまま。じきにカーブで見えなくなる。
「必要としてる人がいるのに……」
「アキラだって見たろう。アイツは俺を殺そうとした」
「そうだけど……っ」
千佳が見えなくなるギリギリで、僕は足を止めた。翔も立ち止まる。
「もう、同じことはしないだろうし……」
僕が言うと、翔は僕の両肩を掴んで、「アキラ」説得するように言った。
「全員分のカードがあるとは限らない。『父』や『次女』があるってことは、母さんや弟たちもこれに参加してるってことだ。アタリのカードは、『次男』と交換するのに使える」
「『次男』を持ってる奴がいないとしたら?」
千佳の声に振り返る。千佳は歩きながら、
「『次男』が用意されていないとしたら?」
翔の顔にザッと影が落ちた。
「用意されてない……?」
翔は千佳の言葉を咀嚼するように、唇に指を当てた。「そんなわけない」と一蹴することなく、その可能性を思惟している。
「用意されていたとしても、一枚しかない場合はどうする?『父』も『母』も、全て一枚ずつしかない場合は……」
千佳は足を止め、ポケットに手を伸ばした。
「……っ」
翔は速かった。千佳がポケットから鋭利な先端を向けるのとほとんど同時に、翔も同じものを向けたのだ。持ち手が木製の、先だけ鋭利に尖ったアイスピック。
千佳とはクレープ屋分の距離がある。ショーケースに並んだクレープ、ポップなメニュー版。そしてゲーム開始からエンドレスで流れる軽快な音楽。多すぎる情報に目が回りそうだ。
「こんなものまで用意されてるんだ。種別カードは一枚ずつ。最後は『殺し合え』ってことだと思わないか?」
千佳は片頬で笑った。もう片方は見事なまでに無表情。
「なおさら、アンタとは行動できないな」
「俺は二人きりで行動する方がよっぽど危険だと思うけど」
千佳はアイスピックをポケットに収め、翔に歩んだ。
「二人の場合は相手に裏切られたら終わり。裏切ったもん勝ちだ」
千佳が僕を見て、翔も横目で僕を見た。
「ぼ、僕は裏切らないっ」
「……わかってる」
でもその声には、薄らと不安が混じっていた。
「ごめん……でも、俺たち『長男』じゃないか」
翔は視線を落として言った。苦しげな声に、反論する気が削ぎ落とされる。
反論? 僕だって最初、翔を疑ったじゃないか。
「俺も長男だ」
千佳は翔の前で足を止めると、アイスピックの先端に自ら額を差し出すように、頭を下げた。
「さっきは悪かった。カードが人数分あると思えなくて、プレイヤーを減らそうと思ったんだ。許してくれとは言わない。ただ、俺には妹がいる。どうしても『次女』が欲しい。他はいらないから、どうか『次女』だけ譲って欲しい」
翔の構えるアイスピックが、千佳の額の下で震えた。
「『長男』は、いらないと?」
「ああ」
「『父』も、『母』も?」
翔が問うと、千佳は一呼吸おいて、顔を上げた。
「いらない。どっちも壊れてしまったから」
淀んだ瞳に、僕は思わず息を飲んだ。驚く僕らを見て、千佳は満足げに、それでいて自嘲気味に笑った。
「心底死んでくれたらって思うよ」
「おにいっ!」
千佳の背後に、僕らと同じ中学の制服を着た少女が現れた。千佳はその声にハッと振り返るなり、駆け寄った。
遠目でも少女を強く抱きしめていることがわかる。僕は二人の再会に焦った。ここには家族がいる。一刻も早く、僕の家族を探さなければ。
翔が歩き出した。進行方向とは逆の、開け放たれたゲートへと。
「翔っ」
僕は翔を追いかけて、ゲートから客席に入った。広々としたスタジアムを見回す。
「アキラ、さっきから流れてるこの音楽……」
翔は階段を下りながら、
「聞いたことあるか?」
「えっ……う、うん」
キャッチーなメロディ。日本のロックバンドの曲で、連ドラの主題歌にもなった。
「俺は知らない」
翔は区切りのいい地点で足を止め、振り返った。
「俺はこんな曲、聞いたことない」
らしくない、困惑したような表情で。