5番 木下康介
毎日のようにある学校が憂鬱だった。
いつも重い足取りで学校に向かい、空気のように過ごす日々。
全部僕が悪いってことは知っている。
元々人とのコミュニケーションを取るのが苦手だったから、クラスに上手く馴染めなかった。
でも最初の方はみんな気にかけてくれていた。
だけど、あの男のせいで僕の日々は地獄に変わってしまった。
「今から話し合い処刑する人を決めてもらいます。決まったら教えてください」
急に現れた黒田と言う男はそう言って、椅子に腰かける。
ていうか今処刑って言ったよな。もしかしたら本当に殺されるんじゃないよな。
しかし、この男ならやりかねない。
だって、さっきうちのクラスメイトを殺したから。
殺されたクラスメイトの名前なんていちいち覚えていない。というかこのクラスの大半の名前なんて僕は知らなかった。
一人の男を除いては・・・・・・
「誰か役職カミングアウトする人はいる?」
クラスの中心である恭平くんがみんなに問いかける。
クラスメイトの名前を知らない僕でも、彼の名前は知っている。
彼は僕のことも気遣ってくれてとても優しい人だから。
「やっぱり誰もいないよな・・・・・・」
みんな命がかかってるって分かってるんだ。
それならここで役職を言うのはリスクが高すぎる。
これじゃ追放する人が決まらないまま時間が流れる。
その時、一人の男が声を発した。
「誰も出ないならさ、康介を追放でいいんじゃね?」
「え?」
その場の空気が一気に変わる。
そう発言したのは、僕が一番に憎いと思っている人物。大橋結城だ。
あいつに目をつけられて以来、僕は学校に行く意味を感じなくなった。
毎日のように金を巻き上げられ、奴隷のような日々を送っていた。
そしてやっぱりこの場でも彼は僕を蹴落とそうとしてくる。
「結城さすがに理由もなしに康介を追放するのは良くないよ・・・・・・」
恭平くんはやっぱり優しいな。でもあいつには何を言っても意味が無い。
そんなのは僕が一番分かっている。
「だって誰も何も言わないんだろ? それなら生きる価値なんてないこいつを追放すればいいだろ」
次から次へと出てくる言葉。
その言葉は僕の胸へグサグサと刺さる。
クラスメイトたちはどんな風に思っているのか。
標的が自分じゃなくて助かったと思ってる人もいるかもな。
だけどこれでいいんだ。
僕は自分の役職を見た瞬間、やっとあいつに勝てると思った。
「僕を殺したいなら殺せばいい・・・・・・」
「康介・・・・・・?」
クラス全員が僕のことを見る。
「んー? 何だって? もう一回言ってみろよ」
「僕を殺したいなら殺せばいいだろ!」
「ははっ、お前ら聞いたか、こいつは自分からこう言った。おいゲームマスター追放はこいつで」
結城は楽しそうに笑っている。
そんなに笑っていられるのも今のうちだ。
「みなさんそれでいいのですか?」
黒田さんの質問に全員が静かに頷いた。
こうなることは分かっていた。
でもそれで良かったんだ。
「黒田さん、僕の役職はハンターなんだ。だから大橋結城を道連れにするよ」
「は? おい、何言ってるんだよ」
「言葉の通りだよ。お前みたいな人間のゴミはここで消えてもらわないとみんなの迷惑だからね」
どうせもう死ぬのなら最後くらい好きかって言おうじゃないか。
今の僕に怖いものなんて何も無い。
「康介さんの役職ハンターは、自分が追放もしくは襲撃にあった時に、誰か一人を道連れにできるというものです」
黒田さんはみんなに分かりやすく説明してくれる。
そしてどんどん顔が青ざめていく結城。
そうだよ、僕はその絶望する顔が見たかった。
「それでは康介さんと結城さんの二人を追放します」
「ふざけんな! なんで俺が追放されなきゃいけねぇんだ!」
「普段から悪いことをしてた罰だよ。 お前は今から地獄に行くんだ!」
「てめぇ絶対許さねぇ! 一生呪うからな!」
横で騒いでる結城を無視して、僕は黒田さんに告げる。
「黒田さん、僕はあなたに感謝します。このようなゲームを開催してくれてありがとうございます」
このゲームがなかったら僕は一生あいつの奴隷だっただろう。
僕はあいつを殺す選択をしたんじゃない。
あいつと共に死ぬことを選んだ。
結果的にこれが良いのかは分からない。
だけど、僕はこれでスッキリした。
大嫌いなあいつと共に地獄に堕ちるよ。
──バンッ! バンッ!
死亡者
大橋結城
木下康介
毎日のようにある学校が憂鬱だった。
いつも重い足取りで学校に向かい、空気のように過ごす日々。
全部僕が悪いってことは知っている。
元々人とのコミュニケーションを取るのが苦手だったから、クラスに上手く馴染めなかった。
でも最初の方はみんな気にかけてくれていた。
だけど、あの男のせいで僕の日々は地獄に変わってしまった。
「今から話し合い処刑する人を決めてもらいます。決まったら教えてください」
急に現れた黒田と言う男はそう言って、椅子に腰かける。
ていうか今処刑って言ったよな。もしかしたら本当に殺されるんじゃないよな。
しかし、この男ならやりかねない。
だって、さっきうちのクラスメイトを殺したから。
殺されたクラスメイトの名前なんていちいち覚えていない。というかこのクラスの大半の名前なんて僕は知らなかった。
一人の男を除いては・・・・・・
「誰か役職カミングアウトする人はいる?」
クラスの中心である恭平くんがみんなに問いかける。
クラスメイトの名前を知らない僕でも、彼の名前は知っている。
彼は僕のことも気遣ってくれてとても優しい人だから。
「やっぱり誰もいないよな・・・・・・」
みんな命がかかってるって分かってるんだ。
それならここで役職を言うのはリスクが高すぎる。
これじゃ追放する人が決まらないまま時間が流れる。
その時、一人の男が声を発した。
「誰も出ないならさ、康介を追放でいいんじゃね?」
「え?」
その場の空気が一気に変わる。
そう発言したのは、僕が一番に憎いと思っている人物。大橋結城だ。
あいつに目をつけられて以来、僕は学校に行く意味を感じなくなった。
毎日のように金を巻き上げられ、奴隷のような日々を送っていた。
そしてやっぱりこの場でも彼は僕を蹴落とそうとしてくる。
「結城さすがに理由もなしに康介を追放するのは良くないよ・・・・・・」
恭平くんはやっぱり優しいな。でもあいつには何を言っても意味が無い。
そんなのは僕が一番分かっている。
「だって誰も何も言わないんだろ? それなら生きる価値なんてないこいつを追放すればいいだろ」
次から次へと出てくる言葉。
その言葉は僕の胸へグサグサと刺さる。
クラスメイトたちはどんな風に思っているのか。
標的が自分じゃなくて助かったと思ってる人もいるかもな。
だけどこれでいいんだ。
僕は自分の役職を見た瞬間、やっとあいつに勝てると思った。
「僕を殺したいなら殺せばいい・・・・・・」
「康介・・・・・・?」
クラス全員が僕のことを見る。
「んー? 何だって? もう一回言ってみろよ」
「僕を殺したいなら殺せばいいだろ!」
「ははっ、お前ら聞いたか、こいつは自分からこう言った。おいゲームマスター追放はこいつで」
結城は楽しそうに笑っている。
そんなに笑っていられるのも今のうちだ。
「みなさんそれでいいのですか?」
黒田さんの質問に全員が静かに頷いた。
こうなることは分かっていた。
でもそれで良かったんだ。
「黒田さん、僕の役職はハンターなんだ。だから大橋結城を道連れにするよ」
「は? おい、何言ってるんだよ」
「言葉の通りだよ。お前みたいな人間のゴミはここで消えてもらわないとみんなの迷惑だからね」
どうせもう死ぬのなら最後くらい好きかって言おうじゃないか。
今の僕に怖いものなんて何も無い。
「康介さんの役職ハンターは、自分が追放もしくは襲撃にあった時に、誰か一人を道連れにできるというものです」
黒田さんはみんなに分かりやすく説明してくれる。
そしてどんどん顔が青ざめていく結城。
そうだよ、僕はその絶望する顔が見たかった。
「それでは康介さんと結城さんの二人を追放します」
「ふざけんな! なんで俺が追放されなきゃいけねぇんだ!」
「普段から悪いことをしてた罰だよ。 お前は今から地獄に行くんだ!」
「てめぇ絶対許さねぇ! 一生呪うからな!」
横で騒いでる結城を無視して、僕は黒田さんに告げる。
「黒田さん、僕はあなたに感謝します。このようなゲームを開催してくれてありがとうございます」
このゲームがなかったら僕は一生あいつの奴隷だっただろう。
僕はあいつを殺す選択をしたんじゃない。
あいつと共に死ぬことを選んだ。
結果的にこれが良いのかは分からない。
だけど、僕はこれでスッキリした。
大嫌いなあいつと共に地獄に堕ちるよ。
──バンッ! バンッ!
死亡者
大橋結城
木下康介