20番 吉岡大和

急にこんなゲームが始まり、俺の頭はどうにかなりそうだった。
人狼ゲームはさすがに知っているが、わざわざ学校に集められてするのは何かおかしい。
これが普通の人狼ゲームじゃないことぐらい、考えればすぐに分かる。
それにあの黒田という男。
あの顔には少し見覚えがあった。
どことなく担任の顔に似ている気がした。
それより俺達をここに呼んだ担任がなんで居ないんだ。
多くの疑問があるが、とりあえず俺は指定された音楽室に向かう。
中に入ると、1枚の紙が置かれていた。

『君の役職は──』
その紙には役職と勝利条件が書かれていた。
本当に人狼ゲームが始まるのか?
何もかも分からないまま2年1組に戻る。

教室に戻る途中、偶然蒼士と出くわした。
「なぁ大和、この人狼ゲーム絶対何かあるよな」
「うん、さすがにただの人狼ゲームでは無いと思う」
疑問に思ってたのは俺だけじゃなかった。
「こんなのに付き合ってる暇は無いし、俺脱出しようかな」
「さすがにそれはまずいだろ」
ニヤニヤしながら言う蒼士を俺は止める。
恐ろしい罰が何かは分からないが、もしも命に関わることなら危険すぎる。
仕方ないが今は黒田に従うしかないと思う。

「大丈夫だろ、もし俺に何かあったらその時は頼んだぜー」
「おい!」
蒼士は俺の言葉を無視し、玄関の方へ行ってしまう。
後を追いかけようとしたが、きっと今のあいつに何を言っても無駄な気がしたから、俺は放っておいた。
さすがに生死に影響は及ばさないだろう。
しかし、その考えが間違っていた。
蒼士と分かれて数分後。

──バンッ! バンッ!
校内に銃声のような音が響く。
音のした方に急いで向かう。
そこには血を流したながら倒れる蒼士と、銃を持った黒田がいた。
「おい、嘘だろ・・・・・・」
「きゃああああ!」
次々に集まるクラスメイト。
「てめぇ、何してんだよ!」
怒りをあらわにした結城が、黒田の胸ぐらを掴む。
しかし、黒田は一切動じていない。
冷酷な目をしたまま結城を見つめる。
その目はまるで世紀がない人間のようだ。
「彼はこの学校から逃げようとした。書いてありましたよね、学校から出ようとした者には恐ろしい罰を与えると」
恐ろしい罰が、本当に死だなんて誰も思っていなかった。
その場の雰囲気が凍りつく。
「みなさん、2年1組に行ってください。ゲームを始めます」

銃を持った黒田に誰も勝てる気なんかしない。俺達は指示に従い、2年1組へ向かう。
「それじゃあみなさん揃いましたね。今から人狼ゲームを始めます。このターンは追放はありませんので好きに話してください。それではどうぞ」
全員恐怖でいっぱいなのだろう。誰1人喋ることをしない。
クラスメイトの死を目の当たりにして、人狼ゲームなんて出来るはずがない。
「とりあえず、自分の役職を言っていきましょう」
静寂を破ったのは愛菜だった。
「たしかに話さないと何も進まないよな。俺は市民だ」
それに同調して自分の役職を言う侑真。
2人に続きどんどん役職を言っていく。
しかし、出てくるのは市民ばかり。

「やっぱりみんな市民としか言わないよな」
ここで市民以外の役職を言っても、後々人狼に殺されるだけだ。
けれど、これだとゲームが一向に進まない。

「一日目の昼はこれで終わりにします。各自先程の部屋に戻り私が合図をするまで部屋から出ないでください。出た者にはもちろん罰を与えます」
結局何の情報も得られないまま、一日目の昼が終わってしまった。


死亡者
八木蒼士