11番 高平咲希

元々20人いたクラスが今では半分になってしまった。
さっきのターンに私が人狼に襲撃されなかったのは奇跡だろう。
きっと次の襲撃は私になる。
だけど私はさっきのターンでもう一人の人狼を見つけることが出来た。
私の力で人狼を二人も追放できる。
死んでしまうのは怖いけど、みんなの為になれたなら良いのかな。


中学時代私はいじめられていた。
仲の良い友達と些細なことで喧嘩をしてしまった。
確実に悪いのはあっちの方。
だけど、周りが庇ったのは私ではなく友達の方だった。
友達の容姿は小柄で小動物のような子だった。
男子からも人気でそのせいだろう。
誰も私の味方なんていなかった。
その日から私はクラス全員から無視され始めた。
学校に行きたくなんてなかった。
それでも親にこのことを秘密にしたまま、私は学校生活を乗り切った。
いじめられていたことを知られたくないから、知り合いのいない高校へ入学した。

一年の時は良いクラスではあったが、親友と呼べる人はできなかった。
二年になって私がすぐに仲良くなったのは、飛鳥と愛菜だった。
私が最初に思ったのは、二人が姉妹のようだということ。
小柄で可愛らしい飛鳥と、スタイルが良く大人っぽい愛菜。
面倒見の良い愛菜がいつも飛鳥の面倒を見ていた。
だけど私は飛鳥が最初は苦手だった。
中学時代の友達と飛鳥の容姿が似ていたから。
また同じことを繰り返してしまうんじゃないかと、私は不安だった。
愛菜も大人っぽく、近寄り難いオーラが漂っていた。
だけど2人はとても優しかった。
私はそんな2人が心から大好きだ。
だから何としても2人には生きて欲しい。
どちらかが欠けることなく、2人一緒に。

全員が教室に戻ってくると、玲音くんの姿だけが見つからなかった。
昨晩の犠牲者が彼だとわかった。
「それでは追放する人を決めてください」
もう何度目だろう。
追放という言葉を聞きたくなんてない。
だけど市民が勝つためには私がここで言わないといけない。

「さっきのターンの占いでもう一人人狼を見つけたの」
「本当か!?」
「もう一人の人狼は・・・・・・茜音だった」
「茜音が人狼だったのか・・・・・・」
みんな驚いた顔をしていた。
それもそうだろう。
茜音はいつだって静かなタイプ。
私も彼女が人狼だとは思わなかった。
逆を言えば静かな彼女だからこそ、ここまでバレなかったのだと思う。
「おい、茜音。なにか言えよ」
「茜音ちゃん。何も言わないと追放されちゃうんだよ」
みんなの質問に何も答えない茜音。
このまま追放される気なのだろうか。

「もう茜音を追放で決定でいいか?」
大和がみんなに促す。
みんなそれに静かに頷く。
本当にこんなにあっさり追放されてしまうのか。

「あーあ、せっかくバレずにここまで来たのにとうとうバレちゃったか」
遂に茜音が言葉を発したが、その喋り方は私たちが知る茜音とは違っていた。
それはまるで別人だった。
「それじゃあお前は人狼なんだな」
「そうだよ、私がみんなを殺したの。私は誰が死んだって正直どうだっていい」
茜音の発言にその場の全員が呆然としていた。
これが茜音の本性・・・・・・

「共に過ごしてきたクラスメイトを殺してといて、てめぇふざけんなよ・・・・・・」
「共に過ごしてきたって何? 私はこのクラス嫌いだよ。だから嫌な奴らを殺せて楽しかった」
「ふざけんな!」
「ばか! やめろ慎也!」
茜音に殴りかかろとした慎也を恭平と大和が必死に抑える。
ここで彼が彼女に手を下した瞬間、きっと彼はペナルティを受けただろう。

「ゲームマスター早く茜音を追放してくれ」
慎也を抑えながら恭平が訴える。
「それでは茜音さんを追放します」
ゲームマスターは茜音に銃を構える。
「最後に言っとくけど、陽菜は人狼じゃないからね」
「えっ・・・・・・?」

──バンッ!

死亡者
古賀茜音