『家族について』

                          ●●小学校●年●組 ●●●●


 わたしの家にはお父さんがいません。おじいちゃんも、ひいおじいちゃんもいません。
 でもさみしくはありません。
 だって本当はいつもそばにいるからです。
 みんな男の人なんていないというけれど、それは嘘です。みんなには見えていないだけです。
 このあいだ、うちに来たおじさんも見えていませんでした。
 でもそのおじさんはうちの家系図を持っていました。東京から返しに来てくれたそうです。
 その家系図をわたしも見せてもらいました。
 昔は家にもっとたくさんの人がいたんだと知ってびっくりしました。
「今はもうみんな死んでしまったのよ」
 とひいおばあちゃんは悲しそうに言っていたので、わたしも悲しくなりました。
 東京から来たおじさんがお父さんについて聞いてきたので、
「お父さんはいるよ」
 とわたしはおじさんの横を指さして教えてあげました。
 するとおじさんはびっくりした顔で横を見ました。
「なにもいないよ」
「いるよ。見えないの?」
「あ、ああ……」
 おじさんは困った顔をすると寒そうにしてすぐに家から出ていきました。
 なんでみんなお父さんのことが見えていないの不思議です。
 お父さんは普通の男の人とはちがうかもしれませんが、わたしたちを守ってくれているのに。
 だからわたしも大きくなったら、お母さんたちみたいにお父さんとけっこんして、子供を産みたいと思いました。