あ、あ。えー私は三井歩。失踪した四ツ谷武尊の友人です。現在は1月5日午後15時25分。場所は四ツ谷のマンションです。
私は四ツ谷本人から、隣人の外国人の様子がおかしいと相談を受けていました。ひょっとすると、失踪に絡んでいるかもしれません。なので、これから隣人宅に伺おうと思います。後々のための証拠になるよう、ボイスレコーダーを起動させたままにします。それでは行ってきます。
(インターフォンの音)
ーーはい。
突然すみません。お隣の四ツ谷武尊さんについて伺いたいのですが、お時間よろしいですか?
ーーああ、お隣さんね……。四ツ谷さんというんですか。ええ。大丈夫です。
失礼ですが、あなたは日本人ですか……?
ーーは? そうですが。
(3秒ほど沈黙)
あ、失礼しました。
私は四ツ谷の友人なのですが、彼とはここ2週間以上も連絡が取れないのです。ひょっとして、何かご存じじゃないかなと思いまして。
ーー……。
率直に申し上げますが、あなたは四ツ谷に嫌がらせをしていたんじゃないですか? 実は以前から相談を受けていたんです。隣の家から不気味な声が聞こえてくるって。
ーー勘弁してくださいよ。そんなことするわけないじゃ、ないですか。
でも、本人からボイスメモまで届いているんですよ? ほら。
(音声データ流れる)
ーーん? これ私の声じゃないですけど
そんなはずは!
ーー何があったか知りませんが、落ち着いてください。よく聞いてください。この音声が隣の部屋から録音した声に聞こえますか?
(壁を手で叩く音)
ーーここの家賃いくらだと思ってるんですか、あなた。この頑丈な壁を通して、こんなに大きな音で録音できると思います?
それは……。
ーーこの音声、どう考えても録音した人が喋ってますよ。何なんですか、この念仏みたいな気持ち悪い音声。
あぁ……。
ーーというか、隣の人から迷惑をかけられていたのは私の方ですよ。
それこそ2週間くらい前かな、夜中に玄関のドアを叩く音が聞こえてきたんです。一定のリズムで、「ドン」…「ドン」…「ドン」……って几帳面に。最初は何かと思いましたよ。夜の3時とかですからね。しばらく怖くて無視していました。でも、5分経っても止まらないんです。
それで、恐る恐るドアスコープを覗いたら、お隣さんがいたんです。無表情で。でも、明らかにこっちをみてました。こっちを見たまま、顔だけがゆっくり近づいて。そして頭を打ち付けるんです。思わず叫びそうになりましたよ。
流石に夢かと思いました。でもね、朝起きたらドアに血がついてたんです。きっと鼻なんて折れちゃったんじゃないかな。あり得ないでしょ。正気じゃないですよ。本当にふざけないでください。正直、失踪してくれてせいせいしてるくらいです。
ーーもう用は済みましたか!? 非常識にもほどがあるでしょ。突然家にやってきて、いちゃもん付けてきて。
ーー聞いてます!? もういいですよね? では失礼。
……バタン……。
…………………。
(ボイスレコーダーの落下音)

私は四ツ谷本人から、隣人の外国人の様子がおかしいと相談を受けていました。ひょっとすると、失踪に絡んでいるかもしれません。なので、これから隣人宅に伺おうと思います。後々のための証拠になるよう、ボイスレコーダーを起動させたままにします。それでは行ってきます。
(インターフォンの音)
ーーはい。
突然すみません。お隣の四ツ谷武尊さんについて伺いたいのですが、お時間よろしいですか?
ーーああ、お隣さんね……。四ツ谷さんというんですか。ええ。大丈夫です。
失礼ですが、あなたは日本人ですか……?
ーーは? そうですが。
(3秒ほど沈黙)
あ、失礼しました。
私は四ツ谷の友人なのですが、彼とはここ2週間以上も連絡が取れないのです。ひょっとして、何かご存じじゃないかなと思いまして。
ーー……。
率直に申し上げますが、あなたは四ツ谷に嫌がらせをしていたんじゃないですか? 実は以前から相談を受けていたんです。隣の家から不気味な声が聞こえてくるって。
ーー勘弁してくださいよ。そんなことするわけないじゃ、ないですか。
でも、本人からボイスメモまで届いているんですよ? ほら。
(音声データ流れる)
ーーん? これ私の声じゃないですけど
そんなはずは!
ーー何があったか知りませんが、落ち着いてください。よく聞いてください。この音声が隣の部屋から録音した声に聞こえますか?
(壁を手で叩く音)
ーーここの家賃いくらだと思ってるんですか、あなた。この頑丈な壁を通して、こんなに大きな音で録音できると思います?
それは……。
ーーこの音声、どう考えても録音した人が喋ってますよ。何なんですか、この念仏みたいな気持ち悪い音声。
あぁ……。
ーーというか、隣の人から迷惑をかけられていたのは私の方ですよ。
それこそ2週間くらい前かな、夜中に玄関のドアを叩く音が聞こえてきたんです。一定のリズムで、「ドン」…「ドン」…「ドン」……って几帳面に。最初は何かと思いましたよ。夜の3時とかですからね。しばらく怖くて無視していました。でも、5分経っても止まらないんです。
それで、恐る恐るドアスコープを覗いたら、お隣さんがいたんです。無表情で。でも、明らかにこっちをみてました。こっちを見たまま、顔だけがゆっくり近づいて。そして頭を打ち付けるんです。思わず叫びそうになりましたよ。
流石に夢かと思いました。でもね、朝起きたらドアに血がついてたんです。きっと鼻なんて折れちゃったんじゃないかな。あり得ないでしょ。正気じゃないですよ。本当にふざけないでください。正直、失踪してくれてせいせいしてるくらいです。
ーーもう用は済みましたか!? 非常識にもほどがあるでしょ。突然家にやってきて、いちゃもん付けてきて。
ーー聞いてます!? もういいですよね? では失礼。
……バタン……。
…………………。
(ボイスレコーダーの落下音)

