(1906年8月17日)

戦慄の四名惨殺
鉈により、ニ戸の寝込みを襲う兇悪事件発生
八月十六日、Y県K島町遠峰村において、二戸家族、合計四名が殺害される事件が発生した。犯人は午前三時ごろ、同村の四ツ谷源右衛門(65)宅を急襲。鉈を用いて寝室で眠る源右衛門・同妻トモ(55)を、使用人部屋において同家の使用人・保坂ミネ(15)の両腕を切り落としたうえで殺害した。

血塗れで民家へ
犯人は、次いで隣に位置する島木藤三郎(34)宅に侵入。物音に気付いて起き上がった藤三郎と数分に渡って格闘したすえ、鉈で頭部を殴打してこれを殺害した。島木家には妻子がいたが、騒ぎに気づくと長持ちのなかに隠れ、辛うじて生き延びた。言語道断の悪行であり、本邦稀にみる兇悪事件である。
かかる兇賊は一日も生き長らえることを許すべからずと、Y県警が勢力を総動員にして捜査を開始。すると、同日早朝になって、遠峰湾の浜辺で一体の死体を発見。検死の結果、死体は四ツ谷源右衛門の一子弾左衛門(26)であることが判明した。死因は自ら、左手の肘より先を切り落としたことによる失血死。何度も腕の切断を試みたためか、切断面は押しつぶされたような状態で、傷口からは骨が飛び出ていた。右手で握りしめていた鉈の形状から、当該人物が四ツ谷家・島木家の殺傷事件の犯人と確かに推測される。凶行の動機を調査すべきであるが、被疑者死亡により、これを推測することしか能わず。