（１９０６年８月１５日）

奇妙な絶景
K島にて珍しき現象　海毛虫大量発生
十四日未明、K島近海の全域にて「海毛虫」が大量発生していると、地元住民よりK町役場に報告があった。海面上の夥しい範囲を、五寸（１５センチ）ほどの海毛虫が絨毯のように折り重なって揺蕩っており、くねくねと蠕動する様子は、言語を絶するほど奇妙である。当該生物はK島では信仰の対象になっているものの、その針に刺されることで、患部に強烈な痛み・痒みを生じる。海岸に流れ着いたものであっても、直接手を触れることは控えられたい。

ただちに殺処分開始される
地元漁師たちは、漁の妨げになるとして、速やかに当該生物の殺処分を進めている。K島始まって以来の異様な光景に、住民たちは「元来は縁起の良い生物で信仰の対象であるが、凶事の予感を感じざるを得ない」と述べている。K島町役場が大量発生の原因の調査を始めた。