ボイスメモの書き起こし
ーーお待たせいたしました。四ツ谷継雄さんのお孫さんですね。このたびは本当にご愁傷さまで……。私たちも驚いていたんですよ。お元気だった継雄さんが、突然こんなことになるなんて。
継雄さん、いつもは慎重でしっかりとした方だったのに。どうしてあんなに車の多い道路を渡ろうとしたんでしょう。なにかに急いでいたのかしら。
ーーいえ。センターでも、ちゃんとされていましたよ。「怠惰だ!」なんて、他の利用者を𠮟ることまであったくらいです(笑)
ーー頭をあげてください。継雄さんが理不尽に怒ることなんて、ありませんでしたから。迷惑な利用者を叱ってくれるので、我々職員はありがたがっていたくらいです。
ーーそうですね。ここしばらくは、何かに怯えているような様子があったかもしれません。一度ゆっくりとお話を伺ったことがあるんですよ。いつも向う意気の強い継雄さんが、珍しく動揺しているので驚きました。眼なんてきょろきょろして。
ーー「忘れたいのに、忘れることができない」と仰っていました。きっと昔の嫌な記憶を思い出したのでしょうね。「頼むから、もう忘れさせてくれ!」と叫び出したことがあったので、寄り添って背中をさすったことがあります。ええ。ご高齢の方にはたまにあることです。
ーーK島? 聞いたことがあります。継雄さんのお爺さんの出身地ですよね。私には気を許してくださっていたのか、いろいろと話してくれました。ええ。具体的には教えてくれませんでしたが、どうやらK島に嫌な思い出があったみたいですね。
ーー「どんなに嫌っても、〇〇〇から離れることができない」「気が付いたら魂が引っ張られるんだ。やっぱりダザエモンの呪いだ」と仰っていたことがあります。なんのことだろうと不思議に思ったのでよく覚えていますよ。〇〇〇の部分は、よく聞き取れなかったのですが。
ーー小声でなにかを繰り返している時もありました。おまじないのような言葉でした。たしかに、おしゃる通り「ソウビエン」と言っていたかもしれません。
ーーお帰りになりますか? ちょっと待ってください。これは、センターからの気持ちです。継雄さんのご霊前にお供えをしてください。お菓子です。
ありがとうございます。素敵ですよね、この包みカミ。天地ハ無用ですので、リュックのなかに入れても大丈夫ですよ。ソウビエンでは、お気をつけて。
ーーお待たせいたしました。四ツ谷継雄さんのお孫さんですね。このたびは本当にご愁傷さまで……。私たちも驚いていたんですよ。お元気だった継雄さんが、突然こんなことになるなんて。
継雄さん、いつもは慎重でしっかりとした方だったのに。どうしてあんなに車の多い道路を渡ろうとしたんでしょう。なにかに急いでいたのかしら。
ーーいえ。センターでも、ちゃんとされていましたよ。「怠惰だ!」なんて、他の利用者を𠮟ることまであったくらいです(笑)
ーー頭をあげてください。継雄さんが理不尽に怒ることなんて、ありませんでしたから。迷惑な利用者を叱ってくれるので、我々職員はありがたがっていたくらいです。
ーーそうですね。ここしばらくは、何かに怯えているような様子があったかもしれません。一度ゆっくりとお話を伺ったことがあるんですよ。いつも向う意気の強い継雄さんが、珍しく動揺しているので驚きました。眼なんてきょろきょろして。
ーー「忘れたいのに、忘れることができない」と仰っていました。きっと昔の嫌な記憶を思い出したのでしょうね。「頼むから、もう忘れさせてくれ!」と叫び出したことがあったので、寄り添って背中をさすったことがあります。ええ。ご高齢の方にはたまにあることです。
ーーK島? 聞いたことがあります。継雄さんのお爺さんの出身地ですよね。私には気を許してくださっていたのか、いろいろと話してくれました。ええ。具体的には教えてくれませんでしたが、どうやらK島に嫌な思い出があったみたいですね。
ーー「どんなに嫌っても、〇〇〇から離れることができない」「気が付いたら魂が引っ張られるんだ。やっぱりダザエモンの呪いだ」と仰っていたことがあります。なんのことだろうと不思議に思ったのでよく覚えていますよ。〇〇〇の部分は、よく聞き取れなかったのですが。
ーー小声でなにかを繰り返している時もありました。おまじないのような言葉でした。たしかに、おしゃる通り「ソウビエン」と言っていたかもしれません。
ーーお帰りになりますか? ちょっと待ってください。これは、センターからの気持ちです。継雄さんのご霊前にお供えをしてください。お菓子です。
ありがとうございます。素敵ですよね、この包みカミ。天地ハ無用ですので、リュックのなかに入れても大丈夫ですよ。ソウビエンでは、お気をつけて。
