この春、私たちは親の再婚により姉弟になった。学年は同じだけど、誕生日順に私が姉、千隼が弟。
もう3ヶ月か、とぼんやり考えていたらいつもの三叉路が見えてきた。電柱に凭れてスマホを弄っていた一颯は私たちに気づくと「遅い」と眉を寄せた。
「俺が寝坊しちゃった」
こういう時、千隼は必ず嘘を言う。まるで用意していたみたいにするりと。私が千隼の寝癖を直していたことを一颯が知ったら不審に思うと分かっているからだ。
千隼が少なからず後ろめたさを感じていることに私は戸惑う。だって、あれは姉弟のコミュニケーションの一種のはずなのに。
仲良さげに話す2人を会話の外で見ていた。千隼は誰とでも仲良くできる。私の幼馴染である一颯ともすぐに打ち解けていた。
じっと見ていたら不意に千隼と目が合う。薄い唇が微かに笑う。