「なんで若月が、そこまでする必要があるんだ!」
 山本くんが私に声を荒らげたのは、後にも先にも一度だけだった。
「そこまでしないと、松本さんを騙せないでしょ」
 女性を味方につけるためには、女性がひどい目に遭っている様子を見せるのが、最も効果的だ。痴漢に味方する女性がいないのと同じだと主張しても、山本くんは反対した。
 体に触られても、下着姿を見られても、私はなんとも思わない。私を傷付けられるのは、この世で、吉田春香だけ。
 私はそう言って、山本くんを黙らせた。
 四日目の追放会議は、まさに村人チームと人狼チームの総力戦だったと言えよう。あの時、山本くんが発した、たった一言。
 ――俺に入れていいぜ。
 あの言葉の意味が、未だにわからない。
 あの場面で、私が山本くんに投票するのは、リスクがあまりにも大きすぎた。
 投票結果は、田城くんに三票(鬼屋敷くん・松本さん・山本くん)。山本くんに二票(田城くん・私)だった。一票差で田城くんが追放されたけど、それはあくまでも結果論だ。鬼屋敷くんの投票先によっては、山本くんが追放されていたのかもしれないのだから。