三日目の追放会議が始まった。
「預言者の二人は、誰を占ったのか発表してください。結果はまだ言わないで。僕は、森脇さんを占いました」
田城くんに名指しされ、美鈴の頬が引き攣ったように見えた。
「ワイは田城」
「私も、田城くんを占ったわ」
田城くんと竹原くんが目配せをする。
「いいでしょう。本家本元の人狼ゲームにならい、一斉にハンドサインで結果を発表してください」
「チョキかツーアウトやな」
「ハンドサインってなんのこと?」
美鈴が心なしか焦っている。
「人間ならピースサイン。人狼なら狼のサインを出すんだ」
美鈴の隣に座る山本くんが、右手の人差し指と小指を立て、残りの三本の指の先をくっつけて、狼のサインを作った。
「行きますよ。せーの!」
田城くんの合図で、三人が一斉にハンドサインを出した。
「どういうこと?」
松本さんが呟くように言う。
ピースサインを出しているのは竹原くんだけだった。美鈴と田城くんは、狼のサインをお互いに向けている。わけがわからない。
「上々やな」
竹原くんは満面の笑みを浮かべている。田城くんは大きく頷いた。
「村人チームの勝利です」
田城くんの声は弾んでいるが、顔の筋肉はあまり動いていない。
「待て! 言うな!」
山本くんが立ち上がって叫んだ。
「ワイ、ほんまは用心棒やねん」
「言っちまったか」
山本くんは溜息をつきながらパイプ椅子に沈んだ。
「かたりだけでも神経使うのに、誰を占ったとか考えんのようせんから、守った相手をそのまま占ったことにしとったわけ。そんで、昨夜は田城を守った。そしたら守りが成功した。田城はほんまもんの預言者っちゅうこっちゃ」
「そうなるのか? 村人側確定ってだけで、村かたりもあるって昨日若月さんが言ってたような。そもそも、竹原くんが本物の用心棒かどうかもわからないし。一度は嘘ついたって、自分で認めたわけだし」
鬼屋敷くんが冷静に分析しているが、田城くんは無視した。
「それだけではありません。僕は昨夜、森脇さんを占いました。結果は人狼でした。今夜、森脇さんを追放すれば、村人チームの勝利です」
一瞬、田城くんが何を言っているのかわからなかった。
「え……? ちょっと待って」
私の声は、かすれて震えていた。
「美鈴が、人狼って、言った?」
私は全員の顔を見回した。山本くんが、心配そうに私を見詰めている。
「嘘……嘘よ! 美鈴が人狼だなんてありえない! そんなことできる子じゃないもの!」
涙がぼろぼろ溢れてくる。冷たくなった指先が小刻みに震え出した。
「咲久良」
美鈴が私の名を呼んだ。潤んだ視界の中央に、困惑した美鈴の顔が見える。涙が止まらない。
正面に座る田城くんが、まっすぐに私を見詰めている。
「若月さん。受け入れたくないのはわかりますが、これが真実です」
「そんな……私は、もう二度と、友達を喪いたくないのに!」
田城くんの視線は、痛ましいものを見ているかのようだった。
「失礼ですが、あなたは森脇さんのことをどこまで知っていますか」
私は言葉を失った。言っている意味がわからない。
「どこまでって、本当に失礼なやつだな」
山本くんが眉根を寄せているが、田城くんはまたもやスルーした。
「お二人が出会ったのは高校に入学してからですよね。一週間前に出会ったばかりの相手に、知らない一面があったとしても、なんの不思議もありません。森脇さんに投票してください。一緒にゲームを終わらせましょう」
「なんだか変な方向に行ってない?」
珍しく静かだった松本さんが困惑している。
「預言者の二人は、誰を占ったのか発表してください。結果はまだ言わないで。僕は、森脇さんを占いました」
田城くんに名指しされ、美鈴の頬が引き攣ったように見えた。
「ワイは田城」
「私も、田城くんを占ったわ」
田城くんと竹原くんが目配せをする。
「いいでしょう。本家本元の人狼ゲームにならい、一斉にハンドサインで結果を発表してください」
「チョキかツーアウトやな」
「ハンドサインってなんのこと?」
美鈴が心なしか焦っている。
「人間ならピースサイン。人狼なら狼のサインを出すんだ」
美鈴の隣に座る山本くんが、右手の人差し指と小指を立て、残りの三本の指の先をくっつけて、狼のサインを作った。
「行きますよ。せーの!」
田城くんの合図で、三人が一斉にハンドサインを出した。
「どういうこと?」
松本さんが呟くように言う。
ピースサインを出しているのは竹原くんだけだった。美鈴と田城くんは、狼のサインをお互いに向けている。わけがわからない。
「上々やな」
竹原くんは満面の笑みを浮かべている。田城くんは大きく頷いた。
「村人チームの勝利です」
田城くんの声は弾んでいるが、顔の筋肉はあまり動いていない。
「待て! 言うな!」
山本くんが立ち上がって叫んだ。
「ワイ、ほんまは用心棒やねん」
「言っちまったか」
山本くんは溜息をつきながらパイプ椅子に沈んだ。
「かたりだけでも神経使うのに、誰を占ったとか考えんのようせんから、守った相手をそのまま占ったことにしとったわけ。そんで、昨夜は田城を守った。そしたら守りが成功した。田城はほんまもんの預言者っちゅうこっちゃ」
「そうなるのか? 村人側確定ってだけで、村かたりもあるって昨日若月さんが言ってたような。そもそも、竹原くんが本物の用心棒かどうかもわからないし。一度は嘘ついたって、自分で認めたわけだし」
鬼屋敷くんが冷静に分析しているが、田城くんは無視した。
「それだけではありません。僕は昨夜、森脇さんを占いました。結果は人狼でした。今夜、森脇さんを追放すれば、村人チームの勝利です」
一瞬、田城くんが何を言っているのかわからなかった。
「え……? ちょっと待って」
私の声は、かすれて震えていた。
「美鈴が、人狼って、言った?」
私は全員の顔を見回した。山本くんが、心配そうに私を見詰めている。
「嘘……嘘よ! 美鈴が人狼だなんてありえない! そんなことできる子じゃないもの!」
涙がぼろぼろ溢れてくる。冷たくなった指先が小刻みに震え出した。
「咲久良」
美鈴が私の名を呼んだ。潤んだ視界の中央に、困惑した美鈴の顔が見える。涙が止まらない。
正面に座る田城くんが、まっすぐに私を見詰めている。
「若月さん。受け入れたくないのはわかりますが、これが真実です」
「そんな……私は、もう二度と、友達を喪いたくないのに!」
田城くんの視線は、痛ましいものを見ているかのようだった。
「失礼ですが、あなたは森脇さんのことをどこまで知っていますか」
私は言葉を失った。言っている意味がわからない。
「どこまでって、本当に失礼なやつだな」
山本くんが眉根を寄せているが、田城くんはまたもやスルーした。
「お二人が出会ったのは高校に入学してからですよね。一週間前に出会ったばかりの相手に、知らない一面があったとしても、なんの不思議もありません。森脇さんに投票してください。一緒にゲームを終わらせましょう」
「なんだか変な方向に行ってない?」
珍しく静かだった松本さんが困惑している。